「過去を嘆いても過去は変わりませんが、未来はこれからいくらでも変えていくことができる」、「歳をとればとるほど、笑顔は大事。笑うと『モテ期』がやってくる」。仕事で落ち込んだときや辛いとき、読むことで前向きになれる書籍が話題を呼んでいる
今回は、『これはしない、あれはする』(サンマーク出版)を紹介したい。著者は、美容研究家・メイクアップアーティストとして活動する、小林照子さん。83歳にして現役のメイクアップアーティスト、美容業界歴は63年の大ベテランになる。
自分の使命が見えてくると
「人生に不安はつきもの。よくないことが続くこともある。そんなとき、私はいつも思う。私はここで何を学べと言われているのだろうか、と」。小林さんは、なんの使命も与えられていない人間など存在しないと言う。人には必ずミッションがあると。
「いやな出会いをすることもあります。苦労をすることもあります。でも、通り過ぎてみると、ただの無駄だったことは何ひとつありません。すべて、人生の勉強。その経験は、勉強を教えてくれた先生だったのです。私の人生にも、いろいろなことがありました。もう、ぐちゃぐちゃです。『なんで私だけこんなに悪い人生なの?』と思い悩み、恨んだり、妬んだりしているときは、1年がとても長かった。」(小林さん)
「でも、悪いこともすべて『勉強させていただいたのだ』と思うようになった瞬間から、心がスーッと軽くなり、『私、幸せだな』と心が幸せで満たされるようになりました。心が幸せを感じると、1年という月日は、なんと短く感じられることでしょう。」(同)
小林さんは、心がいつも幸せを感じるようになることで、自分の使命が見えてくると解説する。自分のために生きるのではなく、人のために、社会のためにできること、喜ばれることは何か、を考えるようになるからだそうだ。
「人はみな、命をまっとうしたら、天に帰ります。でも、天に帰る前に、『天から与えられた使命=天命』を探求し、何かお役に立ってから、命を終わらせたいものです。私が20年以上師事している、惠美初彦さんというコンサルタントの先生に習った方法を教えてあげましょう。」(小林さん)
誰でもできる簡単な方法とは
まず、自分がいままでやってきたことを全部書き出してみよう。勉強、恋愛、仕事、家事、育児、趣味、その他すべてのことを書き出す。これは、自らを客観視する大切な作業になる。思いつくだけ書き出してみよう。
「そして、これらを『喜び』と『悲しみ』に仕分けします。そのあと、喜びのグループに入った出来事を1番から5番まであげてみてください。こうして自分にとっての『楽しかったこと』を抽出していくと、自分はこれから何をすべき人間なのか、少しずつ見えてくるのです。これは、自分にとっての『生きる喜び』は何かを明確にし、自分という人間をもう一度見返すための作業です。」(小林さん)
「作業をしたら、私は美容が好き。自分が培ってきた美容の知識を人に教えるのが好き。人を育てていくことが好きだとわかりました。それゆえに私の天命は、私の美容に対する考え方・知識・技術を受け継いでくれる人を育てていくことだと悟りました。そして美容のプロを育てるスクールや、美容に特化した高等学校をつくったのです。」(同)
参考までに、小林さんが高校をつくったのは、75歳のときである。しかし、天命であれば、年齢などまったく関係ないと言う。「人はいくつになっても自分の天命を知り、いままで積み重ねてきたことの上に、さらに新しいことを積み重ねたり、人生の方向転換をはかったりすることができる」としている。
味わい深い構成を理解する
本書は、サンマーク出版の高橋朋宏(常務取締役編集長)さんが手がけている。高橋さんの、主な実績としては、『人生がときめく片づけの魔法』『病気にならない生き方』がある。この2冊は日本でミリオンセラーを記録している。なお、『人生がときめく片づけの魔法』は、国内で158万部、全世界で700万部を突破している。
著者は、近藤麻理恵さん。2015年の米タイム誌「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。この本が売れた理由の1つが「ときめき」だと考えている。これまで、片付けは面倒なものだったが、片付けに「ときめき」のメソッドを用いたので誰もが驚いた。本を構成する上での骨組みやコンセプチャルは重要。まさに斬新な切り口だった。
では、『これはしない、あれはする』はどうか?「やる」「やらない」の二軸フレームなのでシンプル。しかも、紹介されているコンテンツのすべてに関連性がある。読み込むとよくわかる。1つ1つのつながりがわかると面白い。このロジックは、『人生がときめく片づけの魔法』と同じである。
「人生はなるようにしかならないのだから自然体で過ごすのがいい」「過去が今の自分をつくっているのではなく、今の自分が過去をつくっている」。「人生100年時代」における、ひとつの理想的な生き方がここにある。小林さんの「人生訓」を味わってもらいたい。
尾藤克之
コラムニスト