行政事業レビューの機会に土地所有者不明問題を考えた

昨日(6日)は農林水産省行政事業レビューのために栃木県での現地視察に参加した。

国有林の整備現場は間伐され下草も生え、森林としての保水効果が発揮できそうだった。しかし国有林に至るまでの道筋には、間伐されずに光が入らず、立木は細く下草もない私有林が散見された。森林の約6割が私有林だから、このままでは土砂崩れなどの災害も懸念され、国土保安上問題である。

間伐された後に下草が生えた国有林

手入れされない私有林が生まれる理由の一つが相続問題。資産価値が低いので相続登記がされず、そのうち所有者不明になってしまうのだ。

耕作者が高齢化するとともに田や畑(圃場)が放棄される。そこで、耕作放棄地も含めて圃場を大規模化し、やる気がある専業農家(担い手)に耕作を委ねる事業が推進されている。しかし、耕作放棄地の所有者が不明だと大規模化に着手できない。

耕作を委ねる側と受ける側とを仲介する農地中間管理機構の整備が進んでいる。この制度でも、委ねる側あるいは受ける側で相続が発生すると、通常10年間の契約期間の後に相続人との再交渉が必要になる。

保水効果が高い森林の維持管理でも耕作放棄地を減らし農業生産を増やそうとする施策でも、土地の所有者不明問題が立ちふさがる。

今日6日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が国会を通過した。この法律は所有者不明の土地を公園や仮設道路、文化施設などに利用するのを認めるが、今後は森林や農地にも適用範囲を拡大してほしいものだ。

県内をバスで移動し「飼料生産型酪農経営支援事業」「農林漁村地域整備交付金」「森林整備事業(直轄)」「担い手確保・経営強化支援事業」の四現場を見学した。多くの新しい情報が得られ、来週の公開プロセス本番に向けてよい準備ができた。同時に、土地所有者不明問題について考えさせられた一日だった。