医療的ケア児は、保育の制度において差別されている

2015年度に開始した、子ども子育て新制度の5年後改正に向けて、国の審議会で議論が始まりました。

今日は、子ども子育て新制度に埋め込まれた、障害児差別を公表します。

医ケア児のために作られた「居宅訪問型保育」

子ども子育て新制度は、理念的には非常に素晴らしいものを内包していました。

すべての子ども達への保育。子どもを中心とした制度。それまでの大規模認可保育園のみからの脱却などなど。

そうした理念に基づき、「居宅訪問型保育」は作られました。

審議会提案時は名前だけで中身がほぼ空だったこの制度も、審議会での議論を経て、医療的ケア児や夜間働くひとり親など、これまでの保育制度では救えなかった人々を支えられる制度にしよう、となったのでした。

これは、医療的デバイスとともに生きる医療的ケア児などのもとに、保育者が訪問し、終日保育を行う、というもの。認可されたベビーシッターのようなものですが、対象者は医療的ケア児や通常の認可保育園では対応できないケースに限られています。

一人の保育者が終日、週五で保育をするというと、その人件費がそのままかかるので、普通は頼むことはできませんが、そのコストを埋める補助が出される仕組みになっていて、それは非常に画期的でした。

フローレンスでも、この制度の開始を受けて、「障害児訪問保育アニー」をスタート。認可保育園に断られた医療的ケア児達を預かることができるようになってきました。

広がらない医ケア児のためのマンツーマン保育

しかし、3年経って居宅訪問型保育制度はどうなったか。

他の制度に比べ、ほぼ全く使われていない、という状況になっています。

なぜか。

それは内閣府が後からしれっと出したQ&Aに、とんでもない条文が入っていたためです。

医ケア児だけ補助金が日割り

内閣府の自治体向けQ&A243に以下のような記述があります。

居宅訪問型保育事業は1対1という事業形態であることから、他の施設・事業と異なり、子どもが利用しない日には、当該保育者による保育の提供自体が行われないことから、居宅訪問型保育事業に係る地域型保育給付は日割りとなります。

とあります。

一般の人からすると、何でもない一行のように感じるかと思いますが、保育業界としてはあり得ない一文です。

というのも、基本的には保育園というのは、「子ども一人あたり月いくら補助」という仕組みであり続けてきました。

子どもが週5日通おうと、親がパートで週3日通おうと、子ども1人あたりで補助が出される仕組みです。

これは、当然ながら子どもが通園してもしなくても、保育士の人件費はかかるからなので、費用と収入を対応させなくてはならないからです。

この保育業界の「常識」が、医療的ケア児のための居宅訪問型だけ無視されることになりました。

病気がちな医療的ケア児


医療的ケア児というのは、医療的デバイスと共に生きます。健常児に比べ、病気がちだったり、医療的デバイスを新たにするために入院する等、通園は不安定になりがちです。

よって、保護者の方々も、まずは週3から慣らしていき、週4、週5とちょっとずつ、子どもの体調をみながら預ける頻度と時間を増やしていきます。

週5フルタイムの保育者が、保護者の方の希望である週5を目標にしつつ、その少しずつ増やしていくプロセスを伴走していくわけです。

全く現場を分かっていない内閣府

けれど、内閣府は、「週3しか保育してないんだから、週2は保育士雇っていても補助を払わないぞ」と言っているわけです。

例えばフルタイムで雇用した保育士に、子どもが週3しかこないから、君の給与は週3だよ、と言えるでしょうか?労働問題になりますね。

また、週3の保育士パートを都合よく雇い、そして子どもに合わせてそのパートを都合よく週4にし、さらにはフルタイムにできますでしょうか。無理ですね。

全く現場を分かっていない文言を入れ込んでくれた内閣府ですが、担当者の方に「医療的ケア児をご覧になったことがありますか?」と聞いたところ、「いや、不勉強ながらまだなくて・・・」という答えが返ってきて、怒るよりも脱力してしまいました。

障害児の差別

さて、この日割り制度ですが、居宅訪問型保育は地域型給付という制度の中にあるものですが、他の地域型給付では一切なされていません。

小規模保育で子どもが週4であっても、保育ママで子どもが週3であっても、一切日割りされることはないのです。

制度的合理性が全くないことだけが問題ではありません。

医療的ケア児だけをターゲットにしたルールであり、障害者の差別を禁じた障害者差別解消法に抵触する恐れさえあります。

プロセスに正当性がない

これだけ重要な文言ですが、発出の前に審議会で議論されたことは一度もありませんでした。

百歩譲って、有識者会議などで議論が行われ、医療的ケア児だけは日割りするという合理的な理由(そんなものがあるとは思えませんが)にコンセンサスが得られていたというならば、まだ仕方がないかもしれません。

しかし、1秒たりとも議論をせず、現場や当事者家庭の声も聞かずに内閣府はこのQ&Aを発出しており、それは極めて法的妥当性を欠くプロセスであったと思います。

自治体向けQ&A243を削除して

内閣府は一刻も早く、この差別的で医療的ケア児の保育の広がりを妨げる、自治体向けQ&A243を削除してください。

Q&Aは法律よりも省令よりも下位に属する規定で、部局内で決裁したら変えられるものです。

僕はこの日割り問題は、保育行政が、如何に医ケア児問題に無知で無関心なのか、という象徴だと思っています。

これまで医療的ケア児たちを保育園から締め出しておきながら、ようやく預かりの道が開かれたと思ったら、Q&A一行でそれを台無しにしてしまう。

こんなことを許していたら、医療的ケア児問題なんか後50年経っても解決できません。

全国の医療的ケア児問題に関心のある皆さん、メディアのみなさん。心ある国会議員の皆さん。ぜひ力を貸してください。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年6月6日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。