外務省のレビューで電子行政の課題が見えた

山田 肇

日朝会談にメディアは一杯いっぱいだが、その裏で12日午後に外務省行政事業レビュー公開プロセスが実施された。対象事業は「領事システム」「独立行政法人国際協力機構運営費交付金(技術協力)(青年研修)」「国際機関職員派遣信託基金(JPO)拠出金」の三つ。

各国に置かれた大使館・領事館では邦人の安全確保、領事サービス(在外選挙など)、旅券発給、ビザ(査証)発給という領事業務を実施している。これらついてバラバラに電子化していたものを統合して「領事システム」を構築し、旅券・基盤は2014年度から、査証は16年度から、領事クラウドは昨年度末から運用が開始された。その結果、領事業務にかかわる職員の負担は軽減され運用経費も年15億円削減された。国民にとっても領事館等への申請・届出手続が簡便化・迅速化し、海外旅行中には迅速に安全情報が受信できるようになったという。

外務省は国民のメリットも説明したが本質は外部省内部での改善である。これに対して、次期システムではデジタル・ガバメントに対応するという。その段階に至れば国民と直接データをやり取りする機会が増え、ユーザビリティ・アクセシビリティへの配慮が不可欠になる。

外務省では先行して旅券申請書ダウンロードサービスを開始している。ウェブ画面で住所氏名などを投入すると、それが記載された申請書PDFがダウンロードできるが、今までの紙形式と同一寸法・同一書式となることを最優先しているから使い勝手が悪い。たとえばPDFをプリンタアウトしてから顔写真を正確な寸法で貼付するように求められるが、顔写真は領事館でスキャナーにかけて再度データ化され、旅券にプリントされる。

顔写真のデジタルデータを提出するように求めればスキャンは不要になるし、寸法も旅券のプリント時に合わせればよいだけだ。マイナンバーを利用した在外投票についても次期システムで検討されるようだが、マイナンバーによる情報連携を積極的に活用すれば申請時に求められる情報が削減できる。

次期システムでは業務プロセスの改善を重ねて、ユーザビリティ・アクセシビリティを向上するように求めた。古い書式・古い業務プロセスをそのままにしていては、デジタル・ガバメントは実現しないからだ。議論の結論は「事業内容の一部改善」となった。

青年研修は、途上国の青年層をわが国に呼んで日本の経験・技術を伝える基礎的な研修を行う事業である。研修の委託先選定に競争性が欠如し固定化しており、また研修の効果を評価する定量的な指標が設定されていないことが問題となった。議論の結論は「事業内容の一部改善」。

JPO(Junior Professional Officer)は35歳以下の青年を2年間にわたり国連に研修派遣し、その経験をもとに国連の正規ポストを目指す人材育成事業。政府は国連の日本人職員1,000人を目標にしているが、JPOはその一環である。しかし正規採用率は75%前後であるため、そもそも誰をJPOとして派遣するか戦略性を持って選定する必要があると僕は主張した。この事業も「事業内容の一部改善」という結論になった。