日本の児童虐待防止予算はアメリカの130分の1って知っていましたか?

駒崎 弘樹

小児科学会の推計だと、日本で虐待で亡くなる子どもは毎年350人程度。

1日に約1人、子どもが殺されている計算です。

そうした状況なのに、政府が抜本的に虐待対策に力を入れた、という話は聞きません。

それどころか、児童相談所はいつでも「マンパワー不足」。

ITの仕組みも十分とは言い難く、居所不明児童をFAXで探している現状です。

なぜこんなことが起きているのでしょうか?

最大の原因は、「予算を確保していない」ことです。

社会的養護費用の国際比較

厚生労働省の社会的養護制度の国際比較に関する研究に日本の社会的養護(虐待を防止・対応・自立支援をすること)費用の名目GDPに占める割合があります。

日本は0.02%。

ドイツの0.23%の10分の1以下。

アメリカの2.6%の130分の1の割合です。

日本が如何に虐待防止、社会的養護にお金を払ってきてこなかったか、が分かるというものです。

予算がないことで起きたこと

社会的養護の世界は、予算がないことが前提です。

予算がないから、人は増やせない、ということで、児童相談所は現場職員の長時間労働と根性で回していました。

予算がないから、せっかく助け出した子ども達が入る「一時保護所」は個室ではなく集団部屋で、非行の子と虐待された子が一緒になるケースも多々です。

予算がないから、子ども一人一人を手厚くケアする里親や特別養子縁組は後回しで、大きな施設でたくさんの子どもを預かる方が予算効率が良かったので、施設整備が優先されてきました。

そして、予算がないことで虐待防止システム自体がおんぼろで、子どもが虐待で死んでいくことを十分防げていません。今日も。

なぜ予算がつかなかったのか

社会的養護を充実させて、虐待されている子ども達を助けても、政治的インセンティブはありません。

子どもは投票できないからです。

児童相談所の職員数や、児童養護施設の職員数、里親数を全部合わせても、数としてはたかが知れています。

政治的にメリットが無いのです。

悲しみを、アクションに

数で勝てない領域では、声の大きさで勝つしかありません。

例えば、障害者は健常者に比べてマイノリティですが、一部の当事者と支援者の方々が力を合わせて当事者運動を繰り広げてきたことで、多くの通所施設や障害福祉サービスが充実されてきました。

「保育園落ちた日本死ね」と叫んだたった一人と、呼応した少数の人々の声によって、それまで有識者が十年以上言い続けてきたことが、数カ月で予算がつくことに決まりました。

結愛ちゃん事件で胸を痛めた方々は、悲しみを声にしていってください。ネットでハッシュタグをつけて発信することでも構いません。誰かのネット署名に協力するのでも良いでしょう。あるいは地元の議員さんにメールを書くだけでも違います。

少数者でも大きな声がこだますれば、国のお金の使い方を変えていけるのです。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年6月12日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。