こんにちはパーソナルトレーナーの天野です
もはや気運醸成の心配なぞ一切いらなくなってきたロシアワールドカップでありますので、今回は学生さん・未来の日本代表の皆さんに向けて解析記事を書いてみました。
「簡単だけど難しい」ワールドカップ疑似体験トレーニング
実はFIFAでは各試合の選手スタッツを公開してくれています。
※先日の日本・コロンビア戦での日本チームのスタッツはこちらになります
但し前回記事でも触れた通り、サッカーはデータの羅列だけでは何の意味も見いだせません。そこでここに考察を加えて行きたいと思います。
まず注目して頂きたいのは原口さんのスプリント能力です。
データによると彼は前後半とアディショナルタイムを含めた96分12秒の試合の中で、最高速度32.18km/h(概算で100mを11秒18程度で走る速度)の疾走を含めたスプリントを合計56回行い、トータル10.158km疾走しています。
これは予選第一戦を闘った出場32ヵ国のうち(データフォーマットが異なる為に集計を断念した)「エジプト・ウルグアイ・ペルー」を除く29か国の全選手中、6位の成績となります。
これがいったいどのくらい過酷な事なのか
「30~40m程度のダッシュを1分42秒間隔で28本連続して行う」…これを15分間の休憩を挟んで2セットやって頂くと容易く体感する事ができますので、冗談抜きに学生の皆さんは(※もの凄く大変だと思いますが)ぜひ挑戦して頂きたいです。
ちなみにですが、スプリント・疾走距離・最高時速各部門のトップを挙げておきます。
- スプリント/疾走距離:ロシアのゴロビン(Golovin) 選手の二冠(スプリント69回/疾走距離12706m)
- 最高時速:ポルトガルのロナウド(C.Ronaldo) 選手の33.98km/h(100mを10秒05程度で走る速度)
もっともこちらは「目標」「世界水準」というよりも『てめぇら人間じゃねぇ』の境地に入って来る数値でありますので、あくまで参考資料程度に留められた方が賢明かとは思います。
原口さんとは逆に非常に心配なのが本田選手のスタッツです。
トップスピード19.8km/hとは小学校3年生の徒競走並みの値です。これは一定以上の故障を抱えたのではと疑いたくなる数値です。
ジャイアントキリングをデータから分析する
続いて次戦のセネガル戦に向けたデータ分析を試みたいと思います。
セネガルには俗に「原付オーバー」とも呼ばれる最高時速30キロを超す選手が4名います。
- ニャンNiang選手:32.62km/h(※概算で100mを11.03s程度で疾走する速度:以下同)
- サラSarr選手:32.4km/h(※11.11s)
- マネMane選手:31.28km/h(※11.5s)
- ワグエWague選手:31.28km/h(※11.5s)
一方、日本で最高時速30km/hオーバー選手は先ほどピックアップした原口選手と後は長友選手の二人だけです。この現状戦力でセネガルとスプリント勝負をするのはどう考えても良策とは思えません。
ではどう戦えばいいのか?
ここでヒントとなるのは前回記事同様にアイスランドだと思われます。
アイスランドには先ほど挙げた「スプリント数・総疾走距離・トップスピード」の三部門のトップ20には1選手しか入っていませんが(※トップスピード部門16位:サエバルソンSaevarsson選手)。
しかし「Distance covered /Opposite team in possession(チームがボールを所持していない時間帯の疾走距離)」部門には、なんとトップ10に5名もの選手がエントリーしています。
また同部門のトップ30の選手内訳をみると…アイスランド8名、チュニジア4名、ロシア・ポルトガル・スイス・パナマ各3名、デンマーク・メキシコ各2名、オーストラリア・コロンビア各1名となっています。
アイスランドの8名エントリーがひと際目立ちますが、その他も第一戦でジャイアントキリングを巻き起こした英雄らが名を連なっている事がおわかり頂けるかと思います。
「ボールの無い時間…ディフェンス・ルーズボールでどれだけ動き切る事が出来るのか? 」「どれだけ相手のストロングポイントを殺し切ることが出来るのか? 」巨人を打ち砕くダビデの岩はここに隠されているのだとデータは指し示しているのです。
もっとも、データは一つでも解析(インテリジェンス)は解析者の数だけ生まれます。私と異なった解析が生まれても構わないというか、それが自然だとも思います。
皆さんはどう解析しましたでしょうか。
天野 貴昭
トータルトレーニング&コンディショニングラボ/エアグランド代表
@tamano_ins