先日、都民ファーストの都議の方が、こんな発言をされていらっしゃいました。
超党派の地方議員の皆さんで、都知事に申し入れを行ったそう。
ただ、「児童虐待を取り締まる、という発想だけでなく」という言い回しに違和感を持ったのと、代表が始終ヤジ飛ばしている政党という先入観から以下のようなコメントをしました。
そうしたところ、がっつり反論頂きました。
僕がいつ「児相改革は警察との全件共有だ」って言ったんだよ!と腹が立ち、一触即発のムードに。
そこで、一度会ってがっつり話そうぜ、ということになりました。
会う前にプロフィールを見ると元ボクサーということだったので、喧嘩になったら膝にタックルでグラウンドで勝負するしかない、と脳内シミュレーションしてました。
子育て支援と児相改革の両輪
数日後。内山都議と、たぞえ麻友目黒区議、笹岡裕子 武蔵野市議、おぎの稔大田区議らがいらっしゃいました。
まず僕は言いました。
「子育て支援は非常に重要だし、だから自分も15年間、病児保育・小規模保育・障害児保育とやってきました。一方で、今の児相のままじゃダメなことは明らかで、特に東京都児相の閉鎖性は問題です。
しかし児相改革は児童福祉法の28年度改正の際に行われかけたが、その後棚ざらしです。結愛ちゃんの悲しい事件で世論が高まっている今のうちに、児童福祉司の増員や児相機能の分化等やらないと、いつまで経っても児相が変われなくて、また子どもが死んでいく、っていう危機感を持っているんです。
だから、子育て支援ももちろん進めながらも、タイミング的には児相改革を逃げずにやらないと、と思っているんです」
内山都議:「確かにそれは分かります。一方で、我々は地方議員なので、基礎自治体もできることがある、ということ風に思っているんです」
たぞえ区議:「私は事件のあった目黒区の区議です。目黒区役所は、結愛ちゃんが転入してきた時に、子育てハンドブックを渡す名目で会いに行こうとしていました。けれど、児相から待ってと言われて面会できなかったんです。その間にあの事件が起きてしまった。
児相と子ども家庭支援センター、区役所との間で、もっと情報共有し、連携していかねば、と思っているのです」
駒崎:「仰る通りで、僕たちは保育園でソーシャルワークをやっているのですが、ケースが発生した時に子ども家庭支援センターに通告するのですが、その後どうなったか確認しようと思っても「個人情報なので」と共有してもらえない。結局支援が繋がっていかなくて、リスクを増大させちゃうことになります」
たぞえ区議:「要対協がありますよね?」(編集部注・要対協=要保護児童対策地域協議会)
駒崎:「本来ならば要対協の実務者会議に呼ばれても良いはずですが、呼ばれないんですよね。だからケース共有の場がないんですよ。また、要対協のレベルにまで行かないケースは、なおさら連携できない。だから、要対協の手前で、プレ要対協みたいなのがあって、そこでケース共有できると良いんですけどね」
などなど、密度の濃い議論を交わしたのでした。
そして内山都議がポツリ。
「なんだ、思いは全然違いないっすね」
会って話したら、すぐに理解し合えたのでした。
全件共有の黒幕?
内山都議から「都議会である議員が全件共有についてかなりプッシュしていて。で、その議員と同じ会派の議員と仲良しの駒崎さんが後押ししているのではないか」という質問もありました。
黒幕かっ!w
と爆笑したのですが、もちろん僕にそんな力はありません。
全件共有も言葉が一人歩きしていますが、
①189に来た通告全部 ②(養育相談と虐待通告の2種類に大別される)通告の中の虐待通告を全部 ③虐待通告の中の要保護対策協議会(要対協)で共有されるもの全部 ④「ハイリスク」案件全部
とグラデーションがあります。「どの全件なのか」という定義をまずは話し合う必要がありますが、それを話し合う場は存在していません。
僕たちの児童虐待防止八策では、警察との適切な情報連携について話し合う場を作ってほしい、と言う訴えをしています。
まとめ:自治体のできることはいっぱいある
児相改革は国と都のマターですが、子ども家庭支援センターを機能させる、自治体による100%面談、トワイライトステイ・ショートステイ等の充実、ひろば事業や保育所等へのソーシャルワーク機能のインストール等、自治体にできることはたくさんあります。
今回来てくださった議員たちは、熱い想いを持って、児童虐待防止を考えてくださっている方々ばかりでした。
こうした議員の方々が、積極的に議会で質問して頂き、自治体における子育て支援・児童虐待防止施策を前に進めていってほしいと思いました。
国や都道府県だけでなく、基礎自治体もできることはいっぱいあります。
ぜひ、動いて頂けたら嬉しいです。そしてお住いの自治体の議員に、「児童虐待防止、頼むよ」と言うお声がけを頂けたら嬉しいです。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年7月6日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。