オンライン薬局の信用は、米国・カナダでは、処方箋に基づく調剤ができるかどうかで確認されると、先日の記事『ネットを危険として規制する時代遅れな日本の薬事行政』に書いた。
先日、アマゾンが処方薬のオンライン薬局を米国内で営むピルパックを買収した。ピルパックはネットで処方箋を受け付けたのち、処方薬を1回分ずつ、服薬日時を表記した袋に小分けにして配送する。ピルパックのサイトには、11月15日午前8時に服用するアスピリンなどの処方薬の子袋と、それを引き出すと、続けて午後1時に飲む魚油などのサプリメントの子袋が出てくる様子が表示される。
埼玉県が2014年に実施した調査によると、調査対象者150名全員が飲み忘れ薬を持っており、その総額は223万円だったという。一人1万円以上の飲み忘れがあるという勘定になる。ピルパックのように服薬日時を表示した子袋が次々に出てくるのは、飲み忘れ防止に役立ちそうだ。
ピルパックのサービスはそれだけではない。サイトには次のような説明がある。「毎月、処方薬とその他の医薬品を配送する」「処方箋を発行する医師や、薬代を支払う医療保険に直接連絡を取る」「医師からの連絡で処方の変更に対応する」「旅行などの際の処方薬の追加に対応する」。医療機関とオンライン薬局、さらには医療保険までがネットでつながっているからできるサービスである。
わが国では、診療から服薬指導までをネットで完結させる「処方箋薬剤遠隔指導事業」を、愛知県などの国家戦略特区で開始することが2018年5月に決められたばかりだ。
オンライン薬局には発展の可能性があると買収に乗り出すアマゾンと、大衆薬しか扱えないオンライン薬局を買収するしかなかった楽天で、将来どのような差がつくか、結果は目に見えている。政府による無意味な規制は企業競争力にも影響を及ぼす。