フェデラーとロナウドの新しい道

長谷川 良

フェデラーとロナウド(ユニクロ公式サイト、Wikipediaより:編集部)

サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会は15日、フランスとクロアチア両国間で決勝戦が行われ、14日にはイングランドとベルギー間で3位決定戦が行われる。欧州4カ国が今大会で1位から4位までを独占する。欧州サッカー界が世界のサッカー界をリードしていることを実証したわけだ。

クロアチアが強豪イングランドを延長線の末破ったのはセンセーショナルだった。当方はウィーン市内16区に住んでいるが、同区にはクロアチア・コミュニティがある。W杯中、クロアチア人は勝てば喜び、負ければ暴れるのではないか、と考えていたが、幸い、クロアチアはグループ戦から準決勝まで負け知らずできたので、敗戦後のファンたちの大暴れといった最悪のシナリオはこれまで回避された。

クロアチアがW杯で決勝まで進出するのは今回が初めて。ファンもクロアチア国民も大喜びだろうが、クロアチアのコミュニティ周辺に住む当方のようなクロアチア系ではない住民も平穏が守られて内心喜んでいる。

W杯の熱気で忘れていたが、同時期に、プロ・テニスの最高峰、ウィンブルドン選手権が14日、女子の決勝戦、15日は男子の決勝戦がそれぞれ行われる。当方はこの期間、昼間はウィンブルドン選手権を中心に、夜はW杯をフォローしてきた。

女子はドイツのアンジェリック・ケルバーと4大大会優勝回数でマーガレット・コートの24個にあと一つに迫ったセリーナ・ウィリアムズ(米国)の間で決勝戦が行われる。番狂わせは前回の覇者ロジャー・フェデラーが11日の準々決勝で南アフリカ出身ケビン・アンダーソンに2セット先行しながら敗北を喫したことだ。いずれにしても15日には、W杯の覇者もウィンブルドン選手権の王者も決定する。

ところで、スイス・インフォから興味深い記事が配信されてきた。スイス出身のフェデラーのスポンサーが「ナイキ」から日本の「ユニクロ」に変わったというのだ。フェデラーは20年以上、ナイキのアスリートとして同社のシューズとウェアを着用。その間、男子シングルスのグランドスラム通算20勝という記録も打ち立てた。3億ドルを超える巨額の契約だという。フェデラーは「ユニクロ」の新たなグローバルブランドアンバサダーとなるわけだ。

スイス・インフォはスポンサーの変更がフェデラーにプラスかマイナスかを特集している。ユニクロは欧州では現在、英国やフランス、ドイツなどに店舗があるが、スイスには実店舗もオンライン販売もないことから、ブランドの知名度が高くない「ユニクロ」はフェデラーのイメージにマッチしないという声もある。ちなみに、「ユニクロ」のロゴを着て初登場したフェデラーは残念ながら準々決勝で敗北し、大会から早々に敗退してしまった。

プロ・スポーツ界ではフェデラー(36)だけではない。クリスティアノ・ロナウド(33)が次季からレアル・マドリードからイタリアのセリエAの王者ユベントスに移籍する(4年契約、推定移籍金1億ユーロ)。ロナウドといえばレアルといったイメージが強い。レアルは3年連続チャンピオンズリーグ(CL)で優勝したが、その立役者はロナウドだった。

ロナウドは、「レアルにはお世話になった。感謝だけだ。次の章に進むべき時を迎えた」と述べている。スペインとイタリアは共にサッカー王国だが国民性には大きな違いがある。ロナウドがトリノのユベントスでどのようにファンの心を掴むか楽しみだ。ドイツで活躍した選手がイタリアで苦戦するという話はよく聞く。イタリアで成功しても他国のリーグで成功する保証はない。その意味からもロナウドのイタリア挑戦に注目したい。

「ナイキ」から「ユニクロ」にスポンサーを変えたフェデラー、「レアル」から「ユベントス」に所属クラブを変えたロナウド。誰もが認める実績を積んできた2人のスーパー・スターは今、新しい世界に挑戦する。欧州のスポーツ界は2人の戦いに大きな期待を寄せている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年7月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。