ドル円は今年初めの113円台から、3月にかけて下落基調となり、104円台まで下落した。その後は上昇トレンドを形成し、7月13日には112円台後半に上昇している。今年初めの水準に戻るのは時間の問題となってきた。
ドルがほぼ全面高となり、これはドルが貿易戦争の恩恵を受けるとの見方によるものとされているが、円はドルだけでなくユーロやポンドに対しても下落していることで、円が売られているとの見方もできる。
ドル円については日米の長期金利スプレッドが動く要因のひとつとなっているが、日米の長期金利のスプレッドは日本がほぼゼロ%に張り付いているので、米長期金利次第となる。こちらは戻りが鈍く、2.8%台で推移が続いており、日米金利差がドル円の押し上げ要因とはなっていない。
12日に発表された6月の米消費者物価指数は前月比0.1%上昇、前年比で2.9%上昇となった。食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.2%、前年比で2.3%上昇。総合の前年比では2012年2月以来の伸びとなった。物価も為替に影響を与えるが、通常は長期金利の動向を通じてのものとなる。12日の米10年債利回りはこのCPIが事前予想を下回ったとして、むしろ低下していた。
FRBの正常化について、今年の利上げは4回との見方が強まっており、これもドルの押し上げ要因となるが、やはり長期金利が上がっていないことで、FRBの利上げそのものがドル円の上昇の主要因とは判断しづらい。
以前では日銀の金融調節に外為市場は敏感になっていたが、ここにきて日銀による国債買入の減額もほとんど材料視していない。ただし、7月の決定会合での物価が上がらないことに対する点検を受けて、8月以降、何かしらの調整を行うのではとの観測も一部に出ている。これはドル円にとっては下落要因、つまり円高要因となるはずである。しかし、これもある程度、織り込んだ上での円安の動きとなっているのか。
ドル円は実需的な動きとの見方もある。また、トランプ政権の強引なやり方は、まさにアメリカンファーストの象徴となり、それはつまり外為市場でのドルファーストということになるのであろうか、
それでは円の下落をどう見たら良いのか。アベノミクスの効果が出ての円安との見方は、ここにきての日銀の動きからもそうではないと見ざるを得ない。円安は安倍政権にとって好都合なのかもしれないが、果たして日本経済にとってもそうなのであろうか。
日経平均や円債の動向を見る限りは、日本売りになっているわけではない。あくまで相対的にドルが高く、円が安い状態となっている。いまのところこの理由の説明は難しい。このままドル円のトレンドが継続するとなれば、115円が見えてくる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年7月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。