1週間目の避難所運営・チームビルディング

井上 貴至

平成30年7月豪雨の発災から1週間余りが過ぎました。

最初は、高揚感や安堵感からうまくいっていた避難所も、避難が中長期化することで、疲れがたまり、「イライラが爆発」したり、あるいは高齢者等のなかには「無気力」になっている方もいるかもしれません。

そうしたときに、どうすればいいでしょうか?

避難所に限らず、一般的にチームは、次の段階をたどると言われています。
1)ただ集まってきた人たち(「グループ」)が緩やかにつながり、活動する。
2)うまくいかなくなったり、疲れがたまり、イライラが「爆発」する。
3)「劇的に改善」する。
4)いい状態で「安定」する。

2)のイライラが「爆発」したときに、どうするかが極めて重要です。

消防学校の講師を長く務められている避難所運営のプロ・タフジャパンの鎌田修広先生に伺いました。

(第2回災強防災キャンプ)

⇒ 【体験談】第2回 災強!霞が関防災キャンプ ~帰宅困難を体験して「防災体質」になろう~

1)ストレスコップに、たまっているものを出す。
人間は少しのストレスならばコップにためることができますが、ストレスがたまるとあふれて、イライラが爆発します。そうしたときには、文字どおり「出す」ことが重要になります。

〇話し出す(そのためにゆっくり傾聴する、全面的に肯定する。マッサージや足湯を活用することも有効です。)

〇声に出す

〇汗を出す

〇外に出す(1時間でも、半日でも、環境を変えることも有効です。)

2)1日1センチでも復旧が進んでいることを情報共有する。
多くの人間は、先が見えない環境では力をうまく発揮できません。1日中避難所にいると地域の情報があまり入ってきません。

10時、15時、20時と時間を決めて、ひとりひとりひざ詰めで、今日はここの道路が開通しましたよ、あそこの学校が再開しましたよ、と声をかけていくことで、避難者も復旧が進んでいることを実感します。

このときに大事なのは、最初から掲示板に貼って終わりにしないこと。避難所などでは掲示板に情報があふれ、どの情報が最新か分からなくなるだけでなく、ひとりひとりにひざ詰めで声をかけていくことで、避難者とのコミュニケーションが生まれ、避難者が「話し出します。」

3)避難者の声に素早く反応する。
避難者が話し出すと、例えば、この情報は掲示板で貼ってほしいなどの声が出てきます。そうしたときに素早く反応することで、信頼関係が生まれてきます。あくまで避難者の声や自発性を尊重することが大切です。

4)時間を決めて、生活にリズムをつくる。
非日常の避難所生活の中で、唯一コントロールできるのが時間です。
10時、15時、20時に情報提供する。12時、17時に食事を提供するなど毎日同じ時間にアクションすることで、生活にリズムが出てきます。

5)運動は食事の前に。
人間は2日間全く起き上がらなければ1年分の筋肉が落ちてしまうと言われています。不活性やエコノミークラス症候群を防ぐためにも、定期的な運動はかかせません。

避難所生活の中で、必ず起き上がるのは、食事を取りにくるときです。そのときに、例えば、スクワットを10回した人から食事を食べましょう、など最初は意図的に運動を入れるのも有効です。

体を動かす習慣がついてきたら、避難されている方の中から、もう少し体を動かしたいという声が出てきます。そのときに、ラジオ体操の時間をつくることも有効です。

6)子供に働いてもらう。
熱中症の懸念や衛生的な問題から、子どもたちはなかなか外で遊ぶことができません。避難所の中で、暇と力をもてあましています。

食事の時に、子どもに「食事ができました」と声をかけてもらう、子どもに運んでもらう、など子どもを積極的に活用しましょう。

子どもたちも役割が生まれることで、生き生きしますし、周りの避難されている方も子供に言われると場が和んできます。

7)小さくてもひとりひとりに役割を
ストレスを出したり、生活にリズムが生まれたり、場が和んできたりしてきた段階で、避難されている方の得意なこと・できることを見つけて、小さくてもひとりひとりに役割を与えましょう。

例えば、就寝時に消灯する、窓を閉める、掃除する

などどんなことでもかまいません。
強制ではなく、役割があることで生き生きしていきます。

もう少し知りたい!
【体験談】第2回 災強!霞が関防災キャンプ ~帰宅困難を体験して「防災体質」になろう~


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2018年7月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。