書評「いいから、今すぐやりなさい」

DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい
エドウィン・ブリス
ダイヤモンド社
2018-06-21


筆者は今日、暑い中を滝汗状態であちこち歩いて帰ってきて、はっきり言ってもう仕事する気ゼロである。週に一冊以上と決めている書評の仕事も読んだけどめんどくさいから書くのは土曜日とかでいいや、と先送りを検討中だ。

でも、本書はそういうダメ人間のために書かれた素晴らしい良書である。早速我が身をもって人体実験するとしよう。

・やらない理由を挙げてみる

まずは先延ばそうと考える理由を挙げてみる。それは「疲れてやる気でないから」である。でも本当にそうか?ちょっと普段より歩き回って汗かいてるだけで、別に重い荷物運んだりしたわけじゃないから体は疲労しているとは思えない。そもそも飲みに行こうとさえしてたくらいだし。ということで、はい、却下。

・達成した後のことと最悪の事態を想像してみる

もう一つは「1,2時間頑張って努力してもよい書評がかけなくて結局ボツにするのが不安だから」だ。(人によるが)ものを書く仕事というのは筆者の場合は早朝~お昼前頃がピークで、そこからだんだん生産性が落ち、日が暮れると加速度的に下がる。だから普通は午前中に書き仕事やプレゼン作成の仕事を当て込んで午後はそういう仕事以外にあてている。※

でも、だからって今日やる仕事を明日に延ばす理由にはならない。本書にはちゃんと失敗することへの不安に対する処方箋の述べられているではないか。それは「まず自分が成果をあげている姿を想像し、次に最悪の事態を想定する」というものだ。

今回でいうなら、そこそこ面白いレビューが仕上がり達成感を得られる状況と、2時間ふいにした挙句、疲労度マックスで週末を迎える状況だ。なんだ!最悪つってもぜんぜん大したことないじゃん!いったれ!

・とりあえず5分だけやってみる

何かにとりかかろうと思ったとき、それが完遂できるかどうかを考えると荷が重いという場合でも「とりあえず5分だけやってみる」というのであれば手の出る人は多いだろう。この小さな一歩はすごく重要で、止まっているものは永遠に止まったままだが、動き出せばそのまま惰性で前進し続けるものだからだ。

というわけで実際もう10分くらい書いているけどなんだか気分爽快!よし、5分と言わずあと10分くらい頑張ってみよう!

・ささやかな報酬を設定する

モチベーションを維持するにはささやかな報酬も有効だ。このテクニックは上記の「とりあえず動き出すことが重要」という視点と合わせ、あくまで「ささやかな報酬」にとどめるのが有効だ。というのも、たとえば「一晩で論文6千字仕上げたら明日一日休んで二泊三日でバカンスにいく」みたいな壮大な報酬(とそれに見合う重労働)を設定すると人は重圧で結局は動けないから。

というわけでこの仕事を終えたら暑いシャワーを浴びて冷たいビールでも飲むとしよう!

よし、書けた!

という具合に、本書は誰でもどんな状況でも課題を先送りせずに仕上げさせてしまう魔法の小技集といっていいだろう。何気なく読んでみた一冊だが、この種の書籍としてはトップレベルのインパクトのある一冊かもしれない。

ちなみに筆者はシチュエーション的にテクニックのほんの一部しか紹介していないが、日ごろから先送りしないですむ環境づくりからコンディション管理の方法、「今すぐやる」ことを習慣化するテクニックなどもっともっと幅広く示唆に富む内容だ。勉強がかったるい学生から、会社に行ってもやる気ゼロという“がっついていないビジネスパーソン”まで幅広くおすすめしたい。

※面白いことに小説などフィクション系の作家さんは逆に夜の方が筆が進むらしい。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年7月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。