こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
一昨日の国会では受動喫煙防止法案に加えて、もう一つ重要な法案が可決されておりました。
それが参議院議員の定数を「6増」とする公職選挙法改正案です。
参議院の定数が増えるのは、沖縄が国土復帰して選挙区が新設されたというやむを得ない例外を除けば、今回が初めてとなります。
…人口減少が続き、自民党も議員定数削減を含む抜本的改革を約束していたこの局面で!
6増法 専門家の見方 岩崎美紀子・筑波大教授 「比例代表に特定枠と称する優先当選枠を創設し、それに伴い1票の格差是正とは関係ない比例代表の定数を4つも増やした。」「自由民主主義諸国では考えられない政治的恣意を選挙制度に持ち込んだ。」 #日経 #ippyo https://t.co/W7Aj9a1u7G
— 一人一票実現国民会議(公式サイト) (@hitori_ippyo) 2018年7月19日
すでに野党や多くの有識者が指摘しているように、これは自民党議員の「就職先」を確保する自己保身のための改悪に他ならず、断じて容認することはできません。
改正内容についてはこちらの記事が詳しく解説しておりますけど、前回の改正では「一票の格差」を解消するために、鳥取・島根、高知・徳島の選挙区が「合区」となり参議院議員の定数が減らされました。
今回の改正案における「6増」の内訳を見ますと、埼玉選挙区における2増は、人口増加による「一票の格差」是正のためで、こちらについてはまだ理屈は立っています。
しかしながら、全国比例に個人名を決め打ちして当選させることのできる「特定枠」4議席については、この「合区」によって議席を失う議員たちの身分を確保する目的以外に理由はありません。
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今回の改正案を厳しく指摘したところ、Twitterなどでは
「合区によって切り捨てられる、地方の声はどうでも良いということか!」
といった意見をいくつかいただきましたが、残念ながらこれはまったく的はずれなご指摘であると言わざるを得ません。
そもそも参議院議員が「地域代表」という特性を帯びているのかという議論がなおざりのままですし、地方の声を国政に届けるためであれば、より地域に密着した衆議院議員もいます。
加えて今回の選挙制度では、自民党は前述の「特例枠」を用いて合区にもともといた議員を当選させる腹づもりのようですが、それではもはや「全国比例当選枠の議員」であって「地域から選出された議員」ではありません。
その地域から有権者の票によって選出されるからこそ、地域のために働こうというインセンティブが沸いてくるのであって、別のアルゴリズムで当選した議員の意識には大きな変化が生じることは想像に難くありません。
参議院議員に「地域代表」としての特性・行動を期待するのであれば、憲法改正をして都道府県別の選出方法に変えるなり、公明党が提案した地域ごとの大ブロック比例代表制度を取るなど、他のやり方はいくつもありました。
こうした議論をすべてすっ飛ばして、ただただこのままでは来年の参院選で「失職」してしまう議員の就職先を確保するためだけの定数増に、納得できるという有権者は限りなく少ないのではないでしょうか。
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加えて残念なのは今回の衆院での採決において、自民党内で「造反(棄権)」したのは船田代議士ひとりに留まり、国会改革を声高に主導している小泉進次郎氏らもあっさりと賛成票を投じたことです。
押しも押されぬ若手世代のエースである小泉進次郎氏ですが、やっていることは対世論の「ガス抜き」に過ぎず、闘っているようで「安全圏」からは一歩も出てこないという指摘はかねてからなされてきました。
残念ながら今回の行動はそれを証明した形となってしまい、これまで小泉進次郎氏の「改革」を応援してきた有識者からも厳しい意見が相次いでいます。
そういうわけで急きょ書きました。今回を機に小泉進次郎氏の評価を見直す人は多いのではないでしょうか。正直、彼が今後撤退戦の時代に苦しい政治決断ができる宰相になれるのか疑問です。https://t.co/feEdKRW0BW
— 新田哲史 (@TetsuNitta) 2018年7月18日
私自身も小泉氏のインタビューを映像で見ましたが、余裕と笑みさえ浮かべながら
「名誉のブーイング」
「国会を変えなきゃいけないとの思いを込めた賛成だ」
と語る姿には、やはりこの人には「国民の痛み」というのが心の底では理解できないのではないだろうかと、不安と失望を禁じえませんでした。
来年には消費増税が行われ、国民の負担が増すことは確実となっている中で、これまで小泉氏は「国民の痛み」を主張して地方議員年金復活などに反対してきました。
しかしそれは結局、「国民のためを思ったポーズ」に過ぎず、なんだ地方議員の待遇については切り捨てるのに、お仲間の国会議員には追随するのかとすら思えてしまいました。
もっと涙を浮かべながら「苦渋の決断」感を出すなど、アピールとしてのやり方は色々とあったと思うのですが…。
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ちなみに前衆議院議員の宮崎謙介氏も、「衆院自民党は内心ではみんな反対しているだろう」とした上で、「私自身も現職であれば反対できなかったかもしれない」と、複雑な党内理論・選挙事情を自身のブログで吐露しています。
小泉進次郎氏もその独特の嗅覚から、「今回はまだ勝負どころではない」と判断されたのでしょうし、それは「賢い」判断なのかもしれません。
しかし今、小泉氏に期待している人々は「賢さ」とは違ったものを求めていたはずです。
私自身、これまでも大型国政選挙の比例代表投票先においては、消去法で「自民党」と書いて投票することもありました。
ですが、今回の自民党の行動をもって、来年の参院選では投票先から「自民党」という選択肢は消そうと思っていますし、同じ考えを持つ有権者は少なくないはずです。
「選挙制度のデパート」と呼ばれる日本の選挙が「特例枠」の混在によりさらに複雑・恣意的になってしまったことは極めて残念であり、与党の自浄作用にも大きな期待が持てなくなってきた今、来年の参院選に向けて野党の奮起に期待するものです。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年7月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。