ECBの正常化プロセスに変化なし

ECBは26日の政策理事会で、現在の金融政策の現状維持を決定した。中銀預金金利をマイナス0.4%、リファイナンスオペの最低応札金利をゼロ%、限界貸出金利をプラス0.25%で据え置いた。

月額300億ユーロの資産買入を9月末まで続けた後、10月から月額を150億ユーロに減らし、年末には購入を終了することも再確認した。さらに「少なくとも2019年の夏の終わりまで」現在の政策金利を維持し、満期償還金の再投資も継続されることもあらためて表明した。

ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、ユーロ圏域内のインフレ率がECBの目標である2%に向かい上昇することに自信を示しつつも、関税や貿易障壁が成長を阻害する恐れがあるとの認識を示した(ロイター)。

これを受けて外為市場では、ユーロがドルに対して下落した。ECBの出口戦略が極めて慎重であることから、正常化に向けて淡々と駒を進めるFRBの政策との違いも意識されたようである。

ドラギ総裁は会見で、「ECBは為替レートを政策目標にしていないと、これまでに何度か言明している」と発言した。これは欧州連合(EU)と中国が為替を操作していると批判したトランプ大統領に向けての発言かとみられる。

ただし、トランプ大統領は25日、訪米中のジャンクロード・ユンケル欧州委員長との会談後、関税引き下げに向け欧州連合(EU)と協力することで合意したと述べた。これにより、ひとまず米国とEUの貿易摩擦拡大懸念は後退している。

いまのところ慎重ながらも、ECBの出口に向けてのスケジュールは予定通りに実施される見込みが高いとみている。

日銀は30、31日の金融政策決定会合で、低下した日本の債券市場の機能を回復させるための手段を何かしら講じると予想されている。しかしこれは出口に向けての一歩ではない。現在の異次元緩和策を今後も続けるための微調整と言える。

慎重といえどもECBが出口政策を講じようとしているなか、平時にも関わらず強力な金融緩和策を押し進める日銀との姿勢の違いも今後は顕著になってくるものと思われる。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年7月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。