東京医科大学は女性減点廃止では不十分 --- 勝沼 悠

東京医大公式サイトより:編集部

東京医科大学が文科省官僚の子どもの入試で不正を働いていたことで内部調査をしたところ、女子や浪人生に減点をしていたことが発覚しました。もはや官僚への便宜より女性減点の方が問題といえるかもしれません。

今回の問題、女性を減点しなければいいという単純なものではありません。昔、私のいる業界である非常勤職の採用を巡ってこんな話がありました。採用枠は一名で、性別は不問。しかし、採用側は辞めた前任者が女性でその穴を埋める為の募集なので、採用の際には女性を取ると決めていました。

ところがです。男女雇用機会均等法で募集の際にどちらかの性別を排除することは違法になってしまうので、募集の際は性別についてはふれずに募集するしかありません。その機関は書類や面接の選考を経て男性を落とし、予定どおり女性を採用しました。それならいっそ募集の際に女性限定と書いてくれれば男性は応募しないのに。

男女雇用機会均等法は面倒な手間を増やしただけでした。選考基準や結果を公開しなければ、募集が公平であっても意味はありません。

東京医科大学に対して女性差別をしないといった圧力だけでは不十分です。私は大学入試や採用試験などは原則、選考基準や選考過程を開示することを義務づけるべきだと考えます。女性に対する筆記試験の減点をしないというだけでは、面接などで好きに落とされてしまいます。特に面接試験の選考過程の公開が重要になるでしょう。

どのように選考をしたのかという選考過程の開示がなければ、募集や選考で差別しないという文言は意味を成しません。何らかの属性に対する加点、減点自体は公開さえされていれば禁止しなくてもいいのではないかと考えています。アファーマティブアクションとして逆に女性に加点する大学があってもいいでしょう。加点減点によって不利な人は応募を考えるでしょうし、あまりに社会的に問題のある加点減点をしていればその学校や企業は社会的に糾弾されることになるはずです。

今回の東京医科大学は女性を減点したことそのものも問題ですが、それ以上にその選考基準を隠していたことこそが問題なのです。東京医科大学は他の大学に先駆けて入試の選考基準や選考過程を公開するという改革に踏み切るべきです。

勝沼 悠   専門健康心理士
桜美林大学大学院修了後、15年に渡りスクールカウンセラー、教育相談員など、教育現場や医療現場で心理職として働いています。