トランプの軍事パレード断念の一報と、パリで想起した日本の戦争史

八幡 和郎

マクロン氏の到着式で兵士に敬礼するトランプ氏(ホワイトハウスFacebookより:編集部)

トランプ米大統領は17日、高額な費用を理由に、今年11月10日に首都ワシントンで開催予定だった軍事パレードを中止すると発表した。昨年のフランス革命記念日のパレードに出席し感銘して計画していたものだ。100億円ほどかかるというので、議員に選挙への影響を心配する声が強いからだという。広報宣伝費としては安いものだと思うが。

そのかわりに、トランプ大統領は代わりにパリで行われる第1次世界大戦の終戦記念行事に出席するという。安倍首相もぜひ参加すべきだ。日本が先進文明国側に立って戦ったことを思い出させるべきだ。これは凱旋門の下での行事だ。

フランスでは7月14日の革命記念日についで重要な行事だ。Armistice du 11 novembre 1918といってアルミスティスと通称される。第二次世界大戦はいったん負けてから解放されたので戦勝とはいわないのだ。

この日、パリ郊外のコンピエーニュの森の鉄道食堂車でドイツ軍が降伏文書に署名した。私も見学にいって連合国の一員としての誇りを確認した。ついでながら、私は、パリにある第一次世界大戦の勝利を祝って結成された社交クラブの会員だ(同じ車両で第二次世界大戦でフランスはドイツに降伏文書にいったん署名させられたが)。

このときに、陸軍はドイツ式と決別すべきだったのだが、しなかったどころか、ベルリンに駐在武官として派遣された東条英機は、労働運動を抑圧しなかったので負けただけと報告してドイツと組んで泥沼へ向かった。

東条英機は盛岡藩士の孫。戊辰戦争と第一次世界大戦で反動側に立ちながら、それを反省するのでなくふたつの戦争の負けた方の怨みを背負って“復讐戦”をしたのである。『賊軍の昭和史』(半藤 一利, 保阪 正康)とか言う本があって、「官軍が始めた昭和の戦争を“賊軍”が終わらせた!!」とかデタラメなキャッチつけてるが、長州閥を追放した東条らが始めた戦争だ。薩長系は基本的に親英米だし負け戦は嫌いだ。

東京裁判で処刑されたなかに薩長土肥出身者はいない(東京裁判の正当性とそこで処刑された被告の正当性は別だ)。