米国はこれまで340億ドル相当の中国輸入品に関税を発動した。さらに米国は中国製品160億ドル相当への25%の追加関税を23日から適用すると発表している。これに対し中国も新たに160億ドル相当の米国製品を対象に23日から25%の関税を賦課するとした。
米政府は中国からの輸入品2000億ドル相当への10%関税賦課について検討しており、9月6日の意見公募期間終了後に同関税率を25%に引き上げる可能性もあるとされている。
こういったトランプ政権による強攻策が講じられるなか、米中の貿易摩擦拡大を解消させようとの動きも出てきている。
16日のWSJによると米財務省の招待を受けて王受文・商務次官率いる中国の代表団が訪米し、22日と23日に通商問題を協議することを両国の当局者らが明らかにした。米国側の代表は財務省のデービッド・マルパス次官(国際問題担当)。中国側は劉鶴副首相(経済担当)の側近、廖岷・財政次官も出席する。米中が通商協議を開催するのはおよそ2か月ぶりとなる。
さらに17日のWSJによると、米国と中国は通商対立の解消に向け、ロードマップ(行程表)を策定しており、各国首脳が出席する11月の会合の場で、トランプ大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談を設け、最終決着を目指す青写真を描いているとされる。
トランプ大統領が関税発動に踏み切ったことにより、米中の関係はかなり悪化している。そればかりではない。米中の貿易摩擦の激化によって、中国の売り上げ比率の高いボーイングやキャタピラーなどの株が大きく下落し、米国株式市場全体の地合も悪化した。トランプ政権はこの株価の下落なども睨みながら、中国との通商関係の修復を行う構えとみられる。
通商対立の解消に向け、ロードマップのキーとなりそうなのが11月というタイミングである。トランプ政権が中国に対する関税措置の発動は、言うまでもなく11月6日の米国の中間選挙を睨んだものである。この中間選挙では下院の435議席すべてと上院100議席のうちの35、そして36州の州知事が選出される。
公約は果たすとの姿勢を強調し、この中間選挙を優位に進めたいというのがトランプ大統領の意向とみられる。中間選挙が終了したならば、中国との関係改善を図り、米国株式市場への売り圧力を緩和させる目的もあるのではなかろうか。
11月30日から12月1日にかけて、アルゼンチンのブエノスアイレスでG20首脳会議が開催される予定となっている。この場においてトランプ大統領と習近平国家主席による首脳会談を行い、米中間の通商問題における改善を図ろうとしているのではなかろうか。
ただし、それには中間選挙でトランプ政権の思惑通りの結果が出ることも前提にあろう。このあたりの筋書きが異なると米中の通商対立の解消に向け、ロードマップが書き直される可能性も残る。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年8月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。