容姿が良い人が成功しやすいのは本当か?その理由とは

尾藤 克之

画像は筆者撮影による

「成功者は優秀」「成功者は社交的」「成功者は健康」。どこかにありそうな自己啓発本のテーマではない。エビデンスを元に検証すると、「アメリカの大富豪の大学での成績はよくないこと」「第一線の専門家やトップアスリートの9割は『内向的』であること」『シリコンバレーの成功者の多くは精神疾患スレスレ』であることが判明した。

今回は、『残酷すぎる成功法則9割まちがえる「その常識」を科学する』(飛鳥新社)を紹介したい。これまで語られてきた人生の成功法則をエビデンスを元に検証している内容である。さらに、ボリュームは圧巻の400ページでズシリと重い。TBS系列「林先生が驚く初耳学」(2018.4.29放送)で紹介され反響になり、現在11万部を突破している。

根拠のない自信家は成功するか

成功者には自信家が多い。そして成功をおさめるにつれて、ますます自信を持つようになる。米国で、エグゼクティブコーチングの先導者と呼ばれ、1993年にはウォールストリート・ジャーナル紙から「エグゼクティブ教育のトップ10人」に、2004年には全米経営者協会から「過去80年間、マネジメント分野で最も影響を与えた50人の偉大な思想家・リーダー」に選ばれた、マーシャル・ゴールドスミスは、次のように解説する。

「成功する人は同業者に比べて、自己を買いかぶる傾向が強い。私が主宰する研修プログラムに参加した5万名以上を対象に、仕事ぶりをどう自己評価しているか調査したところ、80~85%の人は、自分が同業者の上位20 %に位置すると回答。また、70 %の人は上位10%に位置すると回答した。回答者が外科医、パイロット、投資銀行家など、社会的認知度の高い職業に就いていると、自己評価はさらに高まる傾向にあった。」(スミス氏)

本記事の本題である、「容姿が良いほうが成功する」という点についても解説したい。「美しい女性は4%ほど収入が高く、ハンサムな男性は3%ほど収入が高い。平均的な雇用者の場合、職歴全般を通じて収入が23万ドル以上増える計算になる。一方、魅力的でない女性は収入が3%ほど低く、魅力的でない男性は22%も低い。ただし、外見が好まれるからではない。容姿が良い者は自信を持つようになるからだとしている。

この結果は的を射ている。筆者はEQ( Emotional Intelligence Quotient)の専門家でもあるので、その側面から解説する。2000年以降、日本では多くの会社で成果主義が導入された。成果主義による組織活性化が期待されたが、むしろ制度上の矛盾を露呈する結果になった。社員のマインドは疲弊し将来のパスが見えにくく漠然とした不安が蔓延する。その後、社員の内面にアプローチする理論としてEQ理論が注目されるようになる。

そして、当時から、根拠のない自信をもつビジネスパーソンのほうが成長が早く成果も出しやすいという結果が導き出されていた。本書でも、「自信を持てば持つほど、利益がもたらされる傾向がある」と結んでいる。人は自信過剰なほうが生産性が伸び、より困難な課題に挑戦するようになり、それにより職場で頭角を現すことになるとしている。これは当時の結果とほぼ符合しているので大変興味深い。

死んだら天国に行けそうな人は誰か?

自信過剰な人は、実質的に業績を上げている人より、昇進する可能性が高い。たびたび発言する自信がある態度で、周りからリーダーと見なされる。過剰な自信は、勘違いにつながらないだろうか?その通りで、それも良いほうに働くようである。

「成功者は、良い意味で“妄想状態”にある。彼らには、自らの経歴を、自分が何者で、何を成し遂げてきたかの証明としてとらえる傾向がある。こうした過去の肯定的解釈は未来に対する楽観主義を増幅させ、ひいては将来の成功の確率を高める。大半の人はすでに、自分自身に対する肯定的な妄想をある程度持ち合わせている。」(スミス氏)

『USニューズ』(U.S.News & World Report)は1997年、1000人の人を対象に『死んだら天国に行けそうな人は誰か?」という調査を行った。全回答者の52%がビル・クリントンと答え、65%がマイケル・ジョーダンと答え、79%がマザー・テレサと回答した。

では、最高の支持を集めたのは誰だったか?マザー・テレサをしのぐ87%の人が天国に行けると太鼓判を押した人物は誰かと言えば、それは「私」(自分)だった。回答者の87%は、「自分こそが天国の門をくぐるのにふわしい人間」だとしたのである。

世間一般で言われてるようなことが、データ上で解説されているので興味深い。心理学・行動科学の論文・著作から調べたり、インタビューにより検証したものがある。まるで、学術論文の先行研究を読むように内容も精査されている。邦訳が一部難しい箇所があるが、読むにあたり支障はない。なお、本記事用に本書一部を引用している。

尾藤克之
コラムニスト

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