ユヌス・よしもとソーシャルアクションが始まります。

吉本興業がノーベル平和賞ムハマド・ユヌス氏と「ユヌス・よしもとソーシャルアクション」を立ち上げました。

ユヌス氏の提唱する「ソーシャルビジネス」は社会問題をビジネスで解決していく取組み。
貧困、失業、環境破壊などさまざまな社会問題を、みんなに起業させ、仕事を作りながら解決していくものです。

ユヌス氏が作ったグラミン銀行は、担保なし、信用だけで、少額のおカネを貸し、貧困者に起業家能力を発揮させる仕組み。年25億ドルを900万人の貧しい女性に貸し付け、返済率は99%。
ソーシャルビジネスの利益率はほぼゼロだが社会的な見返りが大きく、経済的には自立するしかけです。

これは途上国だけのシステムではなく、グラミン・アメリカは8万6千人に5.9億ドルを貸付け、99%を超える返済率を誇るといいます。

日本も高齢化、人手不足、過疎、格差、原発、いろんな社会問題を抱える課題先進国。
これにお笑い創業106年、芸人6000人からなる吉本興業が取り組むことになったものです。
そのギャップがスゴい。

吉本興業は7年前より全国47都道府県全てで「住みます芸人」を活動させています。
地域に根ざした芸人を通じて、各地の課題に光を当てて、楽しみながら解決ができないか。
社会問題というと暗くまじめになりがちですが、それを「わろてんか」で考える。
政治家や官僚、学者などには見えない、本音の問題を芸人がすくい取る。
そしてそれをIT企業や起業家、クリエイター、学生などが解決に当たり、ビジネス化する。
それらをユルくマッチングするのも吉本の得意とするところです。

そのキックオフとして、「ユヌス家族会議」を東京・ペニンシュラホテルで開催しました。
一橋大学・野中郁次郎先生(!)も登壇。
ぼくが山口智充さん(ぐっさん)、ロバータさんと司会を務めました。

会議では、ユヌス氏を紹介する吉本新喜劇に始まり、ゆるキャラ「ユヌスくん」をサプライズで登場させるなど、ユヌスさんが怒り出さないかヒヤヒヤものでしたが、平和賞ユヌスさんは、逆に自分で「ユヌキャラ」をかぶると言い出すノリで、回りを慌てさせました。
その後、ユヌスさん自身のプレゼンに、野中郁次郎先生との討論を経て、具体的なプロジェクトが紹介されました。

銀シャリ、ダイノジ大谷さん、ゆりやんレトリィバァらが高齢化、過疎化、人手不足などの爆笑ネタを披露。
ゆりやんが昭和の映画女優「いやだわ先生」をユヌスさんの眼の前で披露したものの、ユヌスさんは何事が起きているのかという表情を浮かべていましたが、各地の住みます芸人から地域の悩み報告があり、実態が共有されました。

これに対し、会場に集ったスタートアップ企業のかたがたからIT、ソーシャルメディア、IoT、映画などの手法による解決策が提示されました。
シャッター商店街を使ったサバイバルゲーム、センサーで高齢者の家からデータを発信してお米などを配達するシステム、クラウドファンドならぬクラウドギャザリングで人を集める仕組みなども唱えられました。

プロジェクトは今後、これらにファンド機能などを結合したアクションを起こし、ソーシャルビジネスを形作っていくこととしています。

この活動は、貧困をなくすとか、健康と福祉といった国連で採択された世界共通の17の目標 「SDGs」(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも関係しています。
吉本は沖縄国際映画祭のレッドカーペットで 17の目標をPRするなど、SDGsの取組みにも注力しています。
これは目標・ゴールであり、今回のプロジェクトはそれに対するアクション、「そこに導く線路」(ユヌスさん)という位置づけ。

芸人がセンサーとなって課題をおもろく抽出しつつ、IT企業などとマッチングしていく手法がどんな成果を生むか。
めっちゃオモロくて、めっちゃマジメ。

壮大なチャレンジです。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年8月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。