『イブニング』に連載されていた、『学生島耕作 就活編』が完結。先日、単行本も発売された。島耕作の若い時代を描く『ヤング島耕作』シリーズは、若手社員編、主任編、係長編、学生編、その就活編と、タイトルを変えつつ17年間も続いたことになる。姉妹編、外伝のようなものだと思っていたが、これもこれで立派な長編だった。お疲れ様。
この17年間、正直なところ、『課長島耕作』シリーズの本編よりも、『ヤング島耕作』シリーズを楽しみにしていた。率直に、島耕作シリーズは取締役編から面白くなくなった。いや、正しく言うならば、共感できなくなった。M&Aもグローバル展開も結構だが、普通の市民からするとスケールが大きすぎて雲の上の話になっていった。海外取材など、明らかに手間暇はかかっていたのだが。何度もテコ入れが行われ、現在の会長編などでは財界活動なども描かれており、政治経済漫画として面白いのだが。
その点、共感という意味では、ヤング編だろう。新入社員時代の戸惑いや失敗なども描かれており、等身大のストーリーだと感じられる。なかでも学生編は普遍的な青春の悩みが描かれていた。当時の時代の空気感も伝わってきた。もちろん、あくまで著者の視点を通してだが。エンディングも、大きな感動を呼ぶというよりは、何かこう前向きな気持ちに、温かい気持ちになれるものだった。もちろん、やや若者らしさ、青春像の押し付けというものも感じなくはなかったが。
島耕作シリーズはどこから読んでいいのかわからないという人も多いことだろう。まず学生編、ヤング編から読むのも手だ。君も私と同様、「耕作員」になろう。
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年8月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。