起業するならITや金融ではなく、斜陽産業であるべき理由

黒坂 岳央

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

8月23日に「斜陽産業とデジタルが交わる時、大きなビジネスチャンスが生まれる」というテーマでJAGATサマーフェス2018にて講演をさせて頂きました。「アナログ(農業)☓デジタル(ネット)」という要素をテーマに盛り込み、60分間お話をさせて頂きました。

当日、講演でお伝えしたかったメッセージを記事にしたいと思います。

会場で講演する筆者

ITと金融業界で一生勝ち続けていく難しさ

2018年の今、世界をリードするのはITと金融ビジネスです。それは世界時価総額ランキングに現れています(過去記事でより詳しくお話をしています)。

わずか20年前には存在しなかったような若い企業が世界のトップに君臨しており、かつて世界を席巻したオイル業界などを抜き去っています。マザーズを見ていると創業からわずか5年、6年という短い期間で上場にたどり着いている会社がいくつもあり、本当にITと金融のダイナミクスさをうかがい知ることができます。

このように華やかに成功している部分が強調されがちですが、現実にはそれよりも遥かに多い数の日の目を見ることがなかった会社があるのです。どれだけ素晴らしいビジネスであっても、時代にマッチしなかったり、資金的な面で撤退せざるを得なかった企業たちです。また、ITや金融は非常に変化が激しい業界であり、世界中から次々とライバルが登場していますから今の時価総額ランキングトップ10にいる会社もうかうかはしていられません。この先、10年後のランキングは私達が見たことがない会社が君臨している可能性は大いにあるのです。

そんな変化が激しい業界で一生勝ち続けていくのは容易なことではないのです。

「斜陽産業は稼げない」の嘘

私は斜陽産業である「農業関係のビジネス」に取り組んでいます。周囲からは「農業ビジネスでなんてお金を稼げるの?」と心配されてしまうことがあります。

農業は斜陽産業の筆頭です。江戸時代は80%が農業に従事していましたが、今はたったの2%程度、この2%が今後大きく拡大することはもうないでしょう。そうなると凋落する一方で明るいビジョンなんてない、そう感じるのは無理もありません。しかし、その印象は単なる感覚に過ぎず、実際にはそれは誤った認識であるとはっきりと断言させていただきます。

斜陽産業とされるビジネスでも、日本は世界第3位のGDPを誇る大国であり、国内消費は60%もあるのです。依然として市場は大きいですから、これから大きな成長が望めないとしても、少なくとも残りの寿命を全うするまでの間くらいは余裕で食べていけるだけのお金を稼ぎ続けることは十分可能なのです。

私が知っているいくつかの事例をご紹介します。ネットでカニを販売している会社があります。創業から10数年という若い会社ではありますが、年々売上を拡大し続けており昨年の年商は数十億円という額を叩き出しています。また、農園を経営して週休5日で年収2000万を稼ぎ続ける社長や、インバウンド需要の波に乗って外国人観光客の獲得に成功、周囲の農園が閑古鳥が鳴いている中で、一人勝ちをしている農園の社長もいます。

「斜陽産業ビジネスでは稼げない」なんて大間違いです。確かに世界時価総額ランキングトップ10に入ることは難しいですが、斜陽産業でも年収数千万を継続的に稼いでいる経営者は数え切れないほどあるのです。

斜陽産業でネットマーケティングを本気でやっている人は少ない

私はかねてより、フルーツやギフトビジネスについての記事を様々なメディアで情報発信をしています。

今から情報発信をする前はまったくの無名でしたが、この1年間でテレビ、ラジオ、雑誌、ネットメディア、出版、講演と数々のオファーを頂いてきました。これは斜陽産業ビジネスでは情報発信をやっている人がほとんどいないからで、そんな中自分が取り組んだ結果だと思っています。

情報発信を開始する前の私はとても不安でした。「自分より詳しくてすごい知識や経験をしているフルーツビジネスに携わっている人はたくさんいるだろう。2017年からデビューするなんて後発もいいところなのでは?」と。しかし、やってみて驚いたのは自分ほど本気でこのビジネスで情報発信をしている人をほとんど見ない、ということです。他の人がやっていない分野で自分一人が頑張ったことで、多くのメディアや読者の方に見ていただいてきました。本当にありがたいことです。

でもこれは仮想通貨の世界では無理だったでしょう。仮想通貨は全世界で日々、凄まじい速度で情報のアップデートが行われており、また携わっているのはものすごく高学歴や高キャリアを持つ優秀な人ばかりです。そんな世界中の優秀な人たちがしのぎを削って情報発信をしているわけですから、ぽっと出の素人がやってもなかなか難しいわけです。

情報発信をネットマーケティングの一環として行う、という側面で見た場合、同じことをしていても仮想通貨と斜陽産業ビジネスとでは天と地ほど難易度が違うのです。斜陽産業ビジネスに身をおいている事業者は、ライバル不在の市場ががら空きになっている部分はいくらでもあることを知ってもらいたいと思います。斜陽産業でビジネスをしているならむしろ大チャンス!すぐにでも自分の専門分野における情報発信を初めることで成果を得てもらいたいと思います。

最後に…今回は印刷業界における公益法人さまの主催イベントに起用いただき、本当にありがとうございます。私がかねてより伝えたかった「斜陽産業にこそ大きなビジネスチャンスがある」というテーマを発信する良い機会になりました。心より御礼申し上げます。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

新刊『中学レベルの僕が「読むだけ勉強法」で英語をペラペラ話せるようになった!』(2018年9月10日発売予定)

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。