黒川祥子さんの『県立!再チャレンジ高校』は、「底辺高」「課題集中高」「教育困難高」などと形容される高校で、教職員たちが文字どおり全力で、身体を張って、生徒たちを懸命に支え続けてきた闘いの記録。
「困った子」「できない子」と切り捨てる前に、ぜひ多くの人が手を取ってほしいです。
親の自殺、薬物やパチンコ依存、親からのネグレクト・・・
「困った」生徒は、本当は「困っている」生徒だった。
「たぶん、子どもの時から親に話しかけてもらっていないんだろう。だから表現する力がない。抱きしめられていない、親の笑顔を見て育っていない。おまけに小学校から中学校まで、学校でもかまってもらったことがない。
だから自尊感情がとてつもなく低い。この低さを、どう底上げしていくか。ここがオレたち教師に、もっとも問われている。「おまえが大事なんだよ。」というメッセージを3年間発し続けるしかない。」(P199)
という先生の言葉がとても印象に残ります。
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卒業生の3割近くが進路未定。
「卒業で終わりにしない、支援の仕組みを作らないといけない。」
「税金と年金を払える層を増やしていく。困難を抱えた子の自立を支援していくか」
という問題意識を共有し、学校が責任をもって、高校生や卒業生の受け入れ先企業を開拓。開拓で終わりではなく、受け入れ先が過度の負担にならないよう、その後も、しっかりコミュニケーションを取っていきます。
また、生徒のケアが必要な場合、福祉や児童相談所等とも連携していきます。「学校で閉じない」「学校だけで解決しようとしない」姿勢が大切だと改めて考えました。
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また、この本は、管理職の心構えとしても面白かったです。
・メッセージを発し続ける。
・意見が出やすい環境をつくる。
・組織として、みんなで問題意識を共有し、同じ目標に向かわせる。
・必要な人材は、粘り強くスカウトする。
・適材適所でチームとして取り組む。
読みやすい本なのでぜひ。
もう少し知りたい!
●高校魅力化。大人だけでなく、自分たち高校生が伝えたほうがいい。
●公教育の最先端「福岡県飯塚市」
<井上貴至 プロフィール>
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2018年9月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。