日銀は国債買入の回数を減少、その目的は何か

日銀が8月31日の夕方に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、いくつか前回のものと異なるところがあった。

前回の7月31日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」は、本来であれば公表時間が夕方17時予定であったものの、当日の金融政策決定会合後に発表されたことで発表時間が繰り上げられた。これはどうしてなのか。

7月31日の決定会合にて決定された金融政策の修正は、「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」というタイトルながら、実質的な柔軟化策を決定したものといえる。それを良く示すのが、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)のところの長期金利の項目で、前回と次のように変わっていた。

6月会合「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。」

7月会合「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし 、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」

このように7月会合では「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし」、「弾力的な買入れを実施する」としていた。

ただし、引き締めスタンスに転じたわけではないことを示すためにも、17時ではなく決定会合後に、「当面の長期国債等の買入れの運営について」も公表し、すぐ日銀の国債買入スタンスに変化があるわけではないことを示した。

そして、そのときに公表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」の冒頭のコメントは次のようになっていた。

「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年8月1日より適用)」

これに対して、今回8月31日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」の冒頭のコメントは次のようになっていた。

「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしており、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年9月3日より適用)。」

今回はそれとなく「弾力的に実施することとしており」という表現が入ってきているのである。弾力的だから上もあるかもしれないが、目的は下であろうと推測される。

8月31日と7月31日の「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、1年超5年以下の買入額のレンジの上限がそれぞれ1000億円引き上げられている。また、5年超10年以下も同様に上限が1000億円引き上げられた。

その代わりに買入回数が、1年超5年以下と5年超10年以下が8月の6回から5回に減っているのである。これについては9月は3連休が2回あり、決定会合もあり、国債入札日を除く買入日が、かなりタイトになってしまうためとの見方もある。

市場参加者がひとつの目処としている買入額のレンジを中央値を引き上げることによって、回数の減少分をある程度補うことを示したともいえる。

しかし、レンジの上限を増やそうが、一回あたりの買入額がきちんとその分増加させるのかどうかは不透明で、オペの買入額次第では、これは実施的な買入弾力化・柔軟化の一環とみることもできるかもしれない。

7月31日の債券先物はこれを受けて素直に下げた。今回の日銀の「当面の長期国債等の買入れの運営について」の一部修正は債券先物にとっては売り材料と認識されたのである。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年9月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。