独教会「聖職者の性犯罪」をもみ消し

ドイツのローマ・カトリック教会司教会議(DBK)が依頼した聖職者の未成年者への性的虐待事件の調査結果がこのほどまとまり、報告書は今月25日に開催される秋季司教会議総会でラインハルト・マルクス議長(枢機卿)によって発表されるが、それに先立ち、ドイツ週刊紙ツァイトや週刊誌シュピーゲルは12日、概要を報じた。

▲聖職者の未成年者への性的虐待問題に直面する独カトリック教会司教会議(DBK)=DBKの公式サイトから

▲聖職者の未成年者への性的虐待問題に直面する独カトリック教会司教会議(DBK)=DBKの公式サイトから

350頁を超える調査報告書は独立機関に依頼して4年半余りの歳月を投入して行われた結果だ。シュピーゲル誌(電子版)によると、1946年から2014年の68年間で3677人の未成年者が聖職者によって性的虐待を受け、少なくとも1670人の神父、修道院関係者が性犯罪に関与した。

また、ツァイト紙によると、「聖職者の性犯罪では関連書類が恣意的にもみ消され、操作されていた」という。2司教区からの情報によると、未成年者への性的虐待に関する書類が処分されていた。同時に、「調査担当者は司教区の文献室には入室できず、教会保管のオリジナル文献へのアクセスは認められなかった。そのため、調査官は教会関係者を通じてしか文献や資料が見られなかった」という。教会側は聖職者の性犯罪関連資料をもみ消し、言い訳してきた事実を認めている。

調査期間は4年半余りで、独教会の27司教区の総数3万8156人のデータを調査。犠牲者は主に男性の未成年者で半分以上は事件当時、14歳以下だった。

ツァイト紙によると、「多くの司教区では、聖職者の性犯罪の3件に1件しか登録せず、教会法に基づく対応を取っていなかった」という。文書に登録された性犯罪容疑者の1670人のうち、教会側の対応があったのは566人。最終的には154人しか刑罰、制裁を受けず、103人は警告だけで終わっている。

シュピーゲル誌は「件数は抑えられたもので、実数は不透明だがもっと多い」と受け取っている。被害者届けがあって初めて発覚した件が多く、そうでなければ分からないままで終わったという。なぜならば、性犯罪を犯した聖職者は他の教区に人事され、過去の不祥事に関する情報は報告されないケースが多いからだ。

聖職者の未成年者への性犯罪は過去も問題であり、既に克服されたテーマと受け取ることはできない。シュピーゲル誌によると、独教会で性犯罪を犯す聖職者数(聖職者による性犯罪発生率)は全体の4・4%。ただし、教区神父では1429人が性犯罪を犯し、全体の5・1%を占める。そして修道院関係者では159人で2・1%だ。教区神父の場合、発生率は8%にはなると推定されている。

ちなみに、オーストラリア教会では1950年から2010年の間で全聖職者の少なくとも7%が未成年者への性的虐待で告訴された。身元が確認された件数だけでも少なくとも1880人の聖職者の名前が挙げられている。すなわち、100人の神父がいた場合、そのうち7人が未成年者へ性的虐待を犯すという数字だ。ドイツ教会の場合、上記の調査関係者の「8%」という推測は決して大げさな数字とは言えないわけだ(「豪教会聖職者の『性犯罪』の衝撃」2017年2月9日参考)。

なお、未成年者へ性的虐待を犯す聖職者を類型学的に分けると、ナルシスト的社会病質者(narzisstisch -soziopathisch)、ないしは退行性未熟者(regressiv-unreif)に入るという。

世界最古の少年合唱団として有名なドイツの「レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊」(Domspatzen)内で1953年から1992年の間、総数422件の性的暴行・虐待事件が起きていたことが報じられた時、ドイツ国民は大きなショックを受けたが、今回の調査報告は国民に改めて衝撃と憤りを与えることは必至だろう(「独教会の『少年聖歌隊』内の性的虐待」2016年10月16日参考)。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年9月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。