米中間の貿易摩擦が、苛烈さを増しています。
トランプ政権は9月17日の米株相場終了後、中国輸入品2,000億ドル相当に10%の追加関税を24日から発動する決定を下し、中国も報復措置を発表しました。双方、500億ドルを2段階(340億ドル→160億ドル)に分け25%賦課し、今回で3段階目です。米国は中国向け追加関税対象品も産業機器、半導体、消費財、食品まで広げ、中国側もトランプ支持者が集中する中西部を狙い大豆のほか、自動車、木材、LNGへ拡大してきました。
トランプ大統領は交渉姿勢を維持しつつも、2,000億ドルの追加関税措置を2019年に10%から25%ヘ引き上げると警告するだけでなく、報復措置に反応し追加で2,670億ドルと2017年の中国輸入額以上の追加関税措置まで示唆。全面戦争へ突入する緊迫感が漂います。
9月公表分をはじめベージュブックでも通商問題が企業活動に影響を及ぼしつつあるなか、米8月消費者信頼感指数など消費者のセンチメントは好調そのもの。果たして、アメリカ人は中国をどのように捉えているのでしょうか?
ピュー・リサーチ・センターが5月14日〜6月15日にわたり、約1,500人のアメリカ人を対象に対中感情を調査していたので、ご紹介しましょう。チャートのデータ元は、全てピュー・リサーチ・センターです。
Q1. 中国への感情はポジティブ、あるいはネガティブ?
→「ポジティブ」との回答は38%と、2017年の44%から低下。2005年以降で最低をつけた2014年の35%に近い数字となっています。「ネガティブ」との回答は、前年と変わらず47%でした。
2012年以降、中国への好感度が急低下しましたが、同年の大統領選が一因なのかもしれません。2012年と言えば、中国政府が尖閣諸島の領有を主張、日本政府が尖閣諸島3島の国有化で対応すると、中国で反日運動が席巻しまたよね?しかしながら、アメリカ人が問題視したとは思えません。中国の2011年GDPが世界2位に躍り出た事実に加え、中国経済拡大に伴い雇用喪失に関わる懸念、そして中国人の人口増加が背景となったと考えられます。
中国系移民の人口は、ご覧の通り米国で急速に増加中。投資家向けのEB-5ビザが中国系移民の増加を助長した一因に。
対中感情の年齢別では、年齢を重ねるほど中国への好感度が低下していることが分かります。ピュー・リサーチは結果に対し、「若い世代は中高年齢者と比較してサイバー攻撃や雇用喪失をそれほど懸念していない」と分析していました。
Q2. 中国の経済と軍事力、どちらが問題?
→遠く離れた南シナ海での領土問題は所詮、アメリカ人にとっては他人事なのでしょう。「経済」が問題と回答したアメリカ人は58%と、「軍事力」の29%を大きく上回ります。「軍事力」との回答は、2012年に最低をつけた28%に次ぐ水準。逆に「経済」は、6年ぶりの高水準となりました。
Q3. 中国に対する懸念材料とは?
→前述の回答通り、経済に関わる回答が並びます。
党は別での懸念材料に対する見方は、想定通り共和党が厳しい視線を寄せていました。共和党支持者や共和党寄りの有権者の回答は、中国の経済進出に伴う雇用喪失(共:57%、民:48%)をはじめ、対中貿易赤字拡大(共:50%、民:43%)、中国の米国債保有高(共:66%、民:58%)、サイバー攻撃(共:60%、民:50%)で、全て民主党寄りを上回っています。対して、民主党支持者と民主党寄りの有権者の関心事は、中国の成長加速に伴う環境問題(共:44%、民55%)でした。
トランプ大統領を支持する鉄壁の4割は、中国の脅威をより強く受け止める共和党支持者+共和党寄りの有権者の心を掴んでいる証左と言えるでしょう。
(カバー写真:Eric Pesik/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年9月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。