20日の米国株式市場でダウ工業株30種平均が前日比251ドル高の26656ドルとなり、引け値で今年の1月26日以来、約8か月ぶりに史上最高値を更新した。21日もダウ平均は86ドル高となり、連日の最高値更新となった。
米中の貿易摩擦が激化するなかにあっての株高だけに、違和感を持つ方も多いかもしれない。しかし、米中貿易摩擦による経済への負の影響を考慮しても、米国経済は力強く拡大トレンドを継続させているとの見方が、今回の米株上昇の背景にあるかと思われる。
トランプ大統領はOPECは今すぐに価格を引き下げるべきだとツイートしたようだが、原油先物価格がWTIで70ドル台を維持しているのは、OPECなどによる生産調整だけでなく、米国を中心として世界的な貿易拡大も背景にあろう。
20日の自民党総裁選の結果は予想通りに安倍首相が3選を決めたが、日本株はアベノミクスそのものに対しては冷えた目でみている。安倍政権が円安株高を意識して、アベノミクスと呼ばれる政策を行ってきた。しかしそれが効いたのは、欧州の信用不安の後退期というタイミングに、禁断の政策といえるリフレ政策を行うというサプライズが市場を動揺させた当初の時期に限ったものとなった。
いやいやその後もアベノミクスによって、雇用は改善し景気も回復したとの見方もある。しかし、アベノミクスの柱である異次元緩和で物価目標は達成されておらず、アベノミクスが効いたとの見方はその意味ではおかしい。リーマン・ショックと欧州の信用不安という世界的な大きなリスクの後退と、それによる世界経済の回復の波に日本も乗っていたといえる。ただし、日本が世界的な景気拡大に対して自ら先導してはいないことで、例えば日本の株価の上昇は米国などに比較すれば遅れている。
それでも再び米国株式市場のシンボル的な指標であるダウ平均が最高値を更新してきたことで、それに引っ張られるかたちで日本株の上昇にも弾みがつくことが予想される。株価の上昇はリスクオンも意識されることで円安要因となる。米長期金利が3%台を回復してきたことも米景気の回復などが背景にあり、この米長期金利の上昇もドル円の上昇を促すことになる。
日経平均の年初来高値は引け値ベースで1月23日につけた24124円である。日経平均はここが目先のターゲットとなり、ここを抜けてくれば25000円を伺うような動きとなろう。
ただし、米中の貿易戦争の行方、英国のEU離脱問題、中東情勢、北朝鮮問題、新興国経済の動向等々のリスク要因もあり、これらの動向も注意しておく必要はある。最も注意すべきはトランプ大統領のツイートなのかもしれないが。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年9月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。