いまの若者はキャンプを通じて「生きる力」を学ぶべき

尾藤 克之

最近、人材育成にキャンプを活用する取り組みが流行っている。都会の喧騒を離れ、自然の中で過ごす。アウトドアならではの体験に魅力を感じている人たちが増えている。今回紹介する、『ホップ ステップ キャンプ-地域で育む「生きる力」』(みらいパブリッシング)の著者、梶恵一さんは30年にわたり新卒採用に取組んできた。

その経験のなかで、平成生まれの若者に「生きる力」が不足していることに危機感を持つ。梶さんは熱く語る。「キャンプ」経験こそが「生きる力」の源になるのだ! と。

これからの若者には、「キャンプ」の経験が必要

画像は筆者撮影による

「人材採用で会社訪問してくる多くの学生と直接関わってきました。気になるのは『社会人基礎カ』を大きく欠知している若者が年々増えていることです。『社会人基礎力』とは、社会の中で多様な人々と共に仕事をしてゆくために必要な基礎的能力のこと。なぜ昨今の若者たちには『社会人基礎力』が身についていないのでしょうか。」(梶さん)

「その理由の一つは、子ども時代の『わんぱく』経験の欠如にあると思っています。好奇心や冒険心など、子どもの成長期における本来の持ち味であり、その積極的で元気な行動の現れです。以前よりずっと増えた印象の『良い子』に見られる『お行儀の良さ』というのは、子ども時代の子どもらしさが表出されていません。」(同)

この様子について、親の求める理想のわが子像を子どもながらに守る努力をしたもの。つまり、器用にいい子ぶりを発揮して親から褒めてもらう、または叱られない術を身につけているかのようだと指摘する。

「『わんぱく』を通じて身につけることができる力を挙げます。それが、『社会性』です。『社会性』は家庭ではなく、地域のいろいろな人の中で育まれます。昔は、近所のお節介とも思われるオバサンやウルサ型のオジサンがいて、その目や口が『わんぱく』に対する制御機能だったり、時に『応援団』の機能を果たしていました。」(梶さん)

「でも、時代の変化や『わんぱく』の減少とともに、そんな大人も出番がなくなり、絶滅危惧種になってしまいました。だって、外で徒党を組んで遊ぶ子どもがいないのですから。そんな昨今でも『わんぱく』を育て、『わんぱく』的な経験を通じて『社会性』を身につけさせる手段が残っています。それが『キャンプ』です。」(同)

なぜキャンプが効果的だと言えるのか。その理由はキャンプ活動を通じて、子どもや少年期に「わんぱく」に相当する機会と環境を与えるからだと主張する。

キャンプの効能は自然とのふれ合い

「キャンプでは自然と親しむことができますね。自然に触れたり屋外で遊んだりすることでの新しい発見を、五感を通じて促すことができます。これがキャンプ最大の魅力といえるでしょう。日常とは異なる環境の中で自然とつながる。自然のもつ美しさ、面白さ、不思議、ありがたさ、厳しさ、怖さをも体感することができます。」(梶さん)

「キャンプは観光と違って、自然を楽しむだけでは終わりません。自然の中で生活をするのは、結構大変な苦労と動きが伴います。テントを組み立てるのも時間と手間がかかります。食事も限られた道具と食材で自分たちで調理します。今どきの子どもはマッチが擦れません。そもそもマッチ自体が珍しい世の中です。指先の棒に燃える火を持つなんてのは危険極まりない。ナイフ、包丁も然りです。」(同)

梶さんは、社会人3年目のときにある電車の中吊り広告に目を奪われる。男の子が青空と茶色の大地で真っ白な歯を見せて笑っている写真。青年海外協力隊、隊員募集の広告だった。亜熱帯の島国スリランカからの学んだキャンプの極意とはなにか。梶さんは熱く語る。「キャンプ」経験こそが「生きる力」の源になるのだ! と。

尾藤克之
コラムニスト