9月18、19日に開催された日銀金融政策決定会合における主な意見が28日に公表された。この際に金融政策の変更はなかったことで注目度はそれほど高くはなかったが、念のため確認したい。
金融経済情勢に関する意見には次のようなものがあった。
「貿易摩擦への懸念が高まり、国内では自然災害が相次ぐ中、いくつかの景気先行指標が軟調になるなど、先行きの経済・物価を巡る不確実性が増しており、注視する必要がある。」
米中の貿易摩擦問題、さらには台風や地震で大きな被害が出ており、これによる影響なども当然ながら意識する必要はある。ただし、ここにきての株価の上昇などをみても、それほど深刻な影響は出ていないように思われる。
「少子高齢化等の人口動態や労働生産性の動向等と相俟って、自然利子率には先行き低下圧力がかかることが想定される。技術革新の一層の推進により自然利子率を下支えしていくことが重要である。」
こちらの意見であるが、言いたいことはわかるものの、それに金融政策がどう絡んでくるのか問いたい。
「需給ギャップの改善を起点とする物価上昇のモメンタムは維持されているが、それが人々の物価観を変えて、フィリップスカーブの上方シフトにつながるには、まだ相当時間がかかるとみておくべきである。」
日銀の大胆な緩和策が物価に影響を与えるとされる経路について、経路そのものに問題があるような、いつもの意見である。そもそもこの理論そのものに誤りはないのであろうか。
「物価上昇の遅れは、単純な需要不足ではなく、根強いデフレマインドに加え、供給面の拡大による生産性向上など様々な要因に影響を受けることが判ってきており、先行きの物価を巡る不確実性は一頃より高まっている。」
こちらも毎度のご意見ではあるが、そもそも「根強いデフレマインド」とは何なのか。高度成長期、景気の上昇とともに物価も上がり、当然のように賃金も毎年のように上がった時期があった。しかし、私のような引退世代ですら、そういった経験はわずかである。何故、そうなってしまったのか。日銀の緩和が足りなかったのか、いやそうではないであろう。
「根強いデフレマインド」という言葉が一人歩きして、日銀の緩和策の効果を阻んでいるかのような説明であるが、日本が2%という世界標準と日銀が言うところの物価水準を達成できていないのは、日本でも2%という数値が適切なのかという問題とともに、バブル崩壊あたりから雇用体系も変化し、高度成長期と同じような状況ではなくなっており、社会経済構造の変化が大きかったはずである。
根強いデフレマインドがあるとされるが、割高な一部スマートフォンが売れているなど、高くてもほしいものは購入している。ほしい物にはお金を使うが、そもそもほしいものが生み出されておらず、普段購入する物に対してはなるべく価格が安いものを求めるのは消費者心理であろう。これをデフレマインドと言ってしまうと、デフレマインドのない世の中というものが想像できないのであるが。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年10月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。