2018年9月30日に沖縄知事選が行われ、前知事の後継者として立候補をしていた玉城デニー氏が初当選した。
世代別の投票先の2つの着目点
詳しい分析はしていないし、沖縄の空気感なども分からないのですが、世代別の投票先を表した出口調査で気になる点が2点。
1:世代によって支持傾向が違っていること。
グラフをみればお分かりの通り。このような傾向は2015年の大阪都構想に関する住民投票の際あたりからよく見られるようになっている。
今回は結果でみれば、上の世代がより望む結果になったと言える。
ちなみに、昨年の衆院選では、どちらかといえば、若い世代が望む結果となっている。
若い層は自民党。年齢が高くなるほど、野党に投票したという層が増えていきます。ただ、どの年齢層でも、比例投票先の第1位が自民党であることは変わりません。(2017年衆院選NHK特設サイトより)
少子高齢化・人口減少社会への変化にある日本。あるいは高度経済成長期やバブル期などの”繁栄”の時代を知らず、現状が当たり前となっている若者と、そうではない層の価値観や望みの違いが出てきている結果といえる。
10年ほど前であれば、政策が今の高齢者に片寄っており結果若者向けの政策への予算配分が少なくなる「シルバーデモクラシー」「世代間格差」が顕著にみられた。しかしながら、近年の国政選挙や今回の沖縄知事選においてはどの政党・候補者も若者向けの教育・子育て政策を強く掲げるようなっており、以前ほど「“現在の”世代間格差」が見られなくなっているともいえる。つまりは政策内容による世代間の投票先の違いは少なくなっているのではないかということである。
むしろ、「どの政策分野を主要政策として強く押し出すか」、または「色んな政策が細かく網羅されているか」に関しての情報の取り方の違い。あるいは「候補者・政党が設定するイシューとの価値観が近いか」といった、直観の違いが世代によって異なっており投票結果に反映されているのではないかと考えている。
(世代内での格差や、次世代への借金などをどう考えるかはしっかり議論すべきだと思うが)
2:若者層は投票先が割れ、高齢世代は差がついたのか。
もう一つ気になったのが、60代・70代の中で、かなり多くの方が玉城氏に投票をされたということ。投票者の中の3分の2以上の支持を得ている。
10代から30代では佐喜真氏支持の方が多いものの、大きな差がついているわけではない。
朝日新聞に記事によると以下のような投票先の判断基準があるそうだ。
「基地問題」が46%と「経済の活性化」の34%を上回った。「人柄や経歴」10%、「支援する政党や団体」4%と続いた。「基地問題」と答えた人の83%が玉城氏に投票、「経済の活性化」と答えた人の76%が佐喜真氏に投票(朝日新聞記事)
世代別の違いが出ていないが、逆算して考えると多くの高齢世代が「基地問題」を重要だと考え、玉城氏に投票。そして、若者層は「基地問題」「経済の活性化」のどちらを重視するのか人によって違いがあったということだろう。おそらく「経済の活性化」を重視する層が多かったと推測される。
2005年の郵政改革選挙や2009年の政権交代選挙の際に「ワンイシュー選挙」という言葉が良く聞かれた。様々な政策があるなかで、あえて一つのことに有権者の関心を寄せ、反対か賛成かで投票先の決定を促していく戦略だ。
今回、高齢世代は「基地問題」ワンイシュー。つまりは多くの部分は「辺野古移設の是非」に関心が収斂されたのだろう。ちなみに、両候補とも基地返還を公約に掲げている。
そして、若者世代はそれぞれの中で重要視することが違った。
沖縄知事選の争点は辺野古移設にはならなかった
「基地問題」を重視している人の大半が玉城氏を支持したことからわかるように、そもそも「基地問題」の政策の中身は争点になっていないとも言える。そして、「経済の活性化」の政策の中身も争点になっていないとも言える。
今回争点となったのは、「基地問題」か「経済の活性化」のどちらを両候補が大事にしているかということである。
もちろん、辺野古移設にNoを主張する玉城氏が翁長前知事の方針を継承し、当選したことの意味は大きいです。
そして、世代間でみれば「基地問題」を大事にする高齢世代に対して、「経済の活性化」を大事にする割合が多い若者世代の声は、結果に反映されなかった。
選挙の時にすら政策論争がなくて良いのか
全体を見て悔しい事は、各分野の政策の論争がなされなかったこと。
両候補とも「非正規雇用」「女性・子どもの貧困」の解決を両候補とも掲げている。
のであれば、どのような解決方法を考えているのかをより深く議論される場があっても良かった。あるいは、両候補が自身の発信で解決方法を発信すればよかった。
次の時代につなぐ政治になるためには
自分は全国の若者向けに、主権者教育出前授業やイベントを行ってきている。
その中で、強く感じることは「若者は根拠を持って投票先を決めたがっている」ということ。「基地問題」や「経済の活性化」を、”大事にします”という候補者の姿勢だけではなかなか投票先決定にいたらない。
なぜなら、若者は考えなければならないことが多い。教育・子育て・雇用など長い将来の”課題”が山積みだ。
今回も、「まあ、選挙大事だよね」と思いながらも、投票先決定ができず投票しなかった若者がいるのではないだろうか。もちろん、他の用事より優先度が低くて投票しなかった若者もいるだろう。
次の時代につなげる政治となるためには、「まあ、選挙大事だよね」と思いつつも投票に行かない若者を減らすことが求められる。少子高齢化の中で、政治全体・社会全体に諦め感を持っている若者ばかりでは、楽しい未来は見えない。
「候補者・政党が設定するイシューとの価値観が近いか」だけで票を集めるのではなく、そしてなんとなく全方位に「耳障りの良い事」を言うだけでなく、きちっと各政策を議論して候補者の判断基準を、有権者に示してほしい。
編集部より:この記事は、NPO法人YouthCreate代表、原田謙介氏のブログ 2018年10月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は原田氏のブログ『年中夢求 ハラケンのブログ』をご覧ください。