書評「『3か月』の使い方で人生は変わる」

Google出身でシェアNo1クラウド会計ソフトfreeeを生み出した著者によるセルフマネジメントの実践書が本書だ。

「3か月の間、何か一つのことに集中して取り組むことで確実な成果と達成感を得られ、それがさらなる次のステージにつながる」というのがタイトルの意味だ。ちなみにそのことに気づいたのは著者が大学生の時に参加したインターンシップだという(言うまでもないがインターンといっても大手の一日インターンなどとはわけが違う)。

3か月のうち、最初の数週間はプログラミングの勉強をみっちりした。そのあと、試行錯誤を繰り返しながら本気でやり始めたら、データ集計と分析可能なかたちに整える作業が、3か月後には自動化できたのだ(もちろん簡単ではなかったが)。

新しい仕組みが生まれたことで、それまでみんなが手作業で丸一日かかっていた作業が、20~30分で終わり、分析の仕事だけに時間を使えるようになった。
(中略)
みんながやっているメジャーなスポーツや音楽などは、はっきり言って3か月頑張ったところで天井が見えているものも多い。でも一方で、3か月頑張って取り組む人のいないテーマが、世の中にはたくさんある。

だからこそ、誰かが本気で取り組んだことのないニッチなテーマに、あえて3か月注力してみる。その結果、世の中にインパクトを与える成果が生まれ、かつ達成感が得られ、ときに自分でも気づかないうちに人生が変わっていくことがある。

その点以外にもGoogleで吸収した「個人の能力を最大限発揮するノウハウ」と著者オリジナルの工夫の詰まったお買い得の一冊となっている。

きっとビジネスパーソンなら読み進めるうち「あるある」と自分でも納得する箇所に遭遇するに違いない。中でも筆者がとりわけ共感したのは以下の箇所。

やりたいことがいっぱいあるのに、時間が足りない。
しかも、目の前の事務的な作業がなかなか終わらずに、自分が本当にやりたいことになかなかたどり着けない。そう感じている人は、事務的な作業がもたらす充実感の錯覚に取り込まれている可能性がある。
(中略)
うんうん悩みながら企画を考えるより、淡々と目の前のレシートをすべて登録して経費精算するほうが、その時間は絶対に気持ちがいいはずだ。でも、新しい価値を生む企画を考える方が、生産性は明らかに高い。

だから、事務的な作業は「充実感がある割に生産性は低い」とはっきり意識しておく必要があるのだ。

恐ろしいことにビジネスパーソンの中には、この事務的な満足感にどっぷり漬かったまま40代に突入してしまう人が少なくない。そうなると立派な「ルーチンワークしかやらない、新しいことにはとりあえず反対から入る」マンの誕生である。

筆者もよくメルマガで言っているのだが、20代のうちにルーチンワークはさっさと終わらせて浮いたリソースを自身のコアな付加価値領域に投入するクセをつけておかないと、35歳以降で決定的な人材格差が生じることになる。

とりあえず現職で生産性向上やキャリアアップを図りたいという人は、本書のノウハウの半分ほどでいいから実践してみるといいだろう。3か月経ってみればいろんな気づきが得られるはずだ。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年9月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。