時短だけでは「働き方改革」は実現できない!

荘司 雅彦

「働き方改革のせいで持ち帰り仕事が増えた!」
このような悲鳴をよく耳にする。

遅くまでの残業が禁止されたのだから、今までのペースで仕事をしていたのでは時間が足りなくなるのは当然だ。

労働密度を濃くして、できるだけ短時間で仕事を処理する工夫が必要だ。

このように、「働き方改革」は、労働時間削減だけでなく、仕事の密度を濃くすることにも重点を置かなければならない。
その点があまり議論されていないのが、個人的には極めて残念だ。

日本の労働生産性が他の先進国と比べて著しく低いのは、労働時間当たりに生産される付加価値が低いということだ。

極論すれば、30分で終わる仕事を、のんびり1時間かけてやっている労働者が多いということだ。

出勤してすぐに仕事に取りかかる人はいったいどれくらいいるだろう?
コーヒーを飲んだり雑談をしたりといった儀式を済ませてから、おもむろにPCを開く人も多いのではないだろうか?

私がサラリーマンだったころ、労働生産性ゼロの従業員が本当にたくさんいた。
まさに「遅れず、休まず、働かず」で、時間を売って給料を貰うという状況だった。
当時はバブル景気の時代だったので、今日ではあまりないとは思うが…。

労働密度を濃くすれば、大抵の仕事は定時で終えることができる。
以前、事務所を構えていた時、あまりにも時間中の密度が濃かったので、友人の司法書士さんから「秒単位で働いているんじゃないか?」と揶揄されたことがある。

実際、膨大な仕事を抱えながらも、残業ゼロ休日出勤一切なしで通した。
事務の女性陣の優秀さと頑張りにも大いに助けられた。

「時間を売るサラリーマン」がいなくならないのは、厳格な解雇規制に守られているからだろう。
与える仕事はないけどクビにはできないという「扶養家族」がたくさんいることも、労働生産性を下げる大きな原因となっている。

「働き方改革」を実効性あらしめるためには、労働密度を濃くし、働かない扶養家族を解雇できるようにするしかない。

解雇規制を撤廃・緩和すれば、働かなかった「扶養家族」たちも尻に火が付いて労働密度を濃くするよう頑張るかもしれない。
意外な活躍を見せれば、会社にとっても本人にとってもめっけものだ。

重ねて言う。
「働き方改革」は、単なる労働時間の削減だけでは実現できず、労働密度を濃くすることによって実現できるものだ。

中学受験BIBLE 新版
荘司 雅彦
講談社
2006-08-08

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年10月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。