サレンダー橋本『働かざる者たち』が面白い

もっともっとサラリーマン漫画を読まなくちゃと思うのだが、なんせ島耕作シリーズが好きすぎて。そういえば、昨日はJR東日本の「大人の休日倶楽部」のポスターに島耕作が登場していて卒倒。人気者なのか、消費されているのか、複雑な心境になった。…これ、ちゃんと50代の頃の島耕作を使っているだろうか?もうちょっと老けていたような。



そんな中、思わずKindleでカーっとなって買ったサレンダー橋本の『働かざる者たち』(小学館)が超絶面白かった。いまも一部はネットで読むことができる。彼は現在、『SPA!』で『全員くたばれ大学生』を連載している。大学教員として複雑な心境になってしまうタイトルだが、中身も強烈。ただ、大学生をバカにしているようで、大学生活への違和感や、居場所の問題などを描いた佳作である。

これが面白かったものだから、最新の単行本である同書を買ったのだが、これが面白いの、なんの。すべての作品を読んだわけではないのだが、彼は破壊力抜群のその絵を活かしつつも、さらには笑えるギャグを連発しつつも、人間の本質に切り込んでいく。「君たちはどう生きるか?」なんていう意識の高い問いかけがされる今日このごろだが。真面目に生き方を考えるならば、「いかに(必要以上に)働かないか」というのも、やる気がないようで、考えなくてはならない問いなのである。様々な事情を抱えた労働者がいる中、一方で、労働への参加率を上げる工夫をしなくては、今後の人口減少社会を乗り越えることはできない。

もっとも、メンバーシップ型雇用の日本においては、何かとコミットメントが求められ。サボることへの風当たりも強い。

さて、どうするか。

一見すると働いていない人に光を当てつつ、彼らが大事にしている哲学、創意工夫、知られざる過去などに注目している点が素晴らしい。実は働き者漫画なのではないかと思ってしまう。

というわけで、ギャグマンガのようで、日本の労働社会が今、考えるべき問題に斬り込んでいる佳作だった。職場のノンワーキングパーソンたちに対する見方が変わり、さらには自分自身の働き方も変わるかもしれない。ぜひ!


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年10月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。