オリンピック人権条例の審議継続を求め苦渋の退席へ

目黒区5歳女児虐待事件を受けた、厚労省による社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会の結果が10月3日にでましたね(こちら)。本日最終日を迎えました平成30年度第3回定例会一般質問においては、権力に怯まずおもねらず小池知事へは、虐待情報警察全件共有 と学歴詐称疑義にあたり議場での卒業証書・証明書を上田は求めました。

学歴問題については過去blogにまとめてますが、虐待死問題については厚労省の検証結果をチームお姐で検証して改めて報告させて頂きます。

最終日は、左派からも右派からも批判や不安の声があがる注目の五輪人権条例採決がありました。私どもの態度表明はどうだったでしょうか…

審議が尽くされぬままの採決には応じられない

上田の所属する都議会会派「かがやけTokyo」の、見解は、以下の通りです。

「第三回定例会では、いわゆる「人権条例」や工業用水道存廃について、連日深夜にまで及ぶ活発な審議が行われました。しかしながら、とりわけ人権条例について質疑が十分に尽くされたとは到底言えない状態で最終日を迎えたことは、極めて遺憾であります。

最終日の議決において、かがやけTokyoはいわゆる人権条例、169号議案「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」について退席(棄権)するという、苦渋の決断を致しました。2020東京大会の控え、東京都が性の多様性などの理解を促す条例を作ることは極めて重要であり、その方向性には強く賛同します。一方で本条例案は、あまりにも性質が違う内容が混在していること、表現の自由を侵害する可能性があること、審議時間が著しく不足しているなど、賛成するには看過できない点があまりにも多すぎました。

こうした状況に鑑み、条例案に対して賛否を明らかにすることが議員の職責であると十分に理解しながらも、本会議では継続審査という選択ができない以上、「棄権」という意思表示により我々の態度を示し、その行動に対しては説明責任を負うものです。」“平成30年度第3回定例会を終えて”かがやけTokyo幹事長(おときた駿)談話より抜粋

退席する、かがやけTokyoの音喜多幹事長、上田

私たちとしては、審議を継続し、条例案の構成・内容を再考すべきと考えておりました。総務委員会では継続新審査の意見があがったものの通らず、本会議場での審査を求めるような態度表明も不可能。

LGBTの人権尊重も、明らかに人権侵害となるヘイトスピーチの根絶も望むものではありますが、表現の自由の担保については曖昧となっており、条例制定理念には大いに賛同はするものの、今この時における条例案を採決するにあたってもろ手をあげて「賛成」するわけにもいかないと苦渋の判断をいたしました。そこで、我々は、退席し、議決に参加しないという態度表明となりました。

専門家から見た問題点

そもそも東京都は、石原都政の元、長年見直されたことのなかった「東京都人権施策推進指針」が2015年に15年ぶりに舛添都政下で実現したばかり。今般条例の土台となるべき「東京都人権条例」は未だ存在しておりません。そこで以前より都の人権政策につきまして、ご意見・薫陶を得ています、法政大学金子匡良教授神奈川大学山﨑 公士教授の二人の専門家に、問題点を確認をさせて頂き取りまとめておりました。私だけが貴重な知見を独り占めしては勿体ないので、両先生の快諾を得まして、この条例の賛否について高い関心をもって下さった皆々様と共有することで、今後の議論に繋げていければと考えます。

★表現があいまいな点★
東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例

・「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念」という記述のみでは、「人権尊重の理念」の具体的内容がうかがい知れない。そこで、オリンピック憲章〔2017年9月15日から有効〕第1章、2 IOCの使命と役割、7項「男女平等の原則を実践するため、あらゆるレベルと組織において、スポーツにおける女性の地位向上を奨励する。」、ならびに第4章、27 国内オリンピック委員会(NOC)の使命と役割、2.5 「スポーツにおけるいかなる形態の差別にも、暴力にも反対する行動をとる。」
を生かして、第1条に下記の文言を加えてはどうか。「(男女平等の原則及びあらゆる差別の撤廃等)オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念」のように、()内を加える。

・「誰もが認め合う共生社会」という文言があるが、何を認め合うのかが不明なことから、オリンピック憲章には、「人間の尊厳の保持」(the preservation of human dignity)という言葉があるように、「誰もが互いの人格と尊厳を認め合う共生社会」などとすべきではないか。

・「人権に関する不当な差別を許さない」という文言があるが、なにをして不当なのか明示されていない。「不当な差別をはじめとする、あらゆる人権侵害を許さない」などとすべきではないか。

・オリンピック憲章には「人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく…」という文言がある。オリンピック憲章を条例名に関する以上、このような広範な差別禁止事由を前文に掲げるべきではないか。

★都民・事業者の責務について★
・2条3項・4項が定める都民・事業者の責務と、6条・7条が定める責務は重複して いないか? 前者は後者を包含していると考えられるので、6条・7条は不要ではないか?

★9条2項の文言について★
9条2項では「インターネットによる方法」という文言になっているが、12条4項では「インターネットを利用する方法」という文言になっている。後者に統一すべきではないか。

★救済措置について★
申出に基づいて行われる都の措置を、ヘイトスピーチに関する拡散防止措置等に限定しているが、第4条でLGBTへの差別を禁止している以上、LGBT差別に関しても申出に基づく救済措置等を盛り込むべきではないか。そうでないと、4条の禁 止規定が空文化してしまうのではないか。

★LGBT施策に関する審議会について★
ヘイトについては、条例で設置する審査会に、意見具申機能が付与されているが、同様にLGBTに関する啓発等の取組に関しても、知事に意見を具申する審議会 等を設置すべきではないか。

(おそらくは、そうした役割は「東京都人権施策専門家会議」が担うので、新たな審議会は必要ないということかと推察されるもの、だとすれば、LGBTに関する啓発も東京都人権施策推進指針に基づいて行えば足りるのであって、あえて条例を制定する必要はない。あえて条例を制定して、特定分野の啓発の推進を謳う以上、その推進体制についても整備すべきである。)

★ヘイトの拡散防止措置の内容について★
12条が定める拡散防止措置は、表現活動への抑制を伴う場合があるので、その内容を条例に明記しておかないと、予見可能性を奪い、表現行為の萎縮を招かないか。(端的に言えば、憲法違反のおそれがあるのではないか。)

★ヘイトの拡散防止措置の対象について★
12条の拡散防止措置条例は、すでに行われた表現行為が対象となっているが、行われようとしている表現行為に対する抑制措置(例えば、中止の要請や説諭等)を盛り込むべきではないか。

以上
先生方のご意見をうかがうことで、非常にモヤモヤ思っていたことの論旨がスッキリいたしました。改めてご協力感謝申し上げます、ありがとうございました。今後は適正運用の監視を続けてまいります。

お姐総括!

来年の第1回定例会にむけて虐待防止条例策定に今東京都は動きだしてますが、今回の拙速な五輪人権条例と全く同じパターンです。デフォルトの「東京都人権条例」なくして「LGBTへの差別撤廃」「ヘイトスピーチ根絶」に特化した条例は機能しないと考えます。虐待防止条例も世論の矢面に立たされ耐えきれなくなって突貫工事で作ろうとしていますが、まずは「子どもの権利条例」が先ではないでしょうか?

これまでの歴代都知事(お姐当選後すでに三人目(・_・;)を見てきますと、批判を受けたり支持が弱まってくると、
・イベントに顔を出し始める
・外遊をし始める
・場当たり的な耳障りの良い事業や条例をつくる

ことに、もっとも耳障りがいいものが「人権関係」です。平素はたいてい放置しているのに…

知事の、お手柄拙速条例にNO!

といえるのは都議会と都議会議員だけです。都民がまるめこまれないよう問題提起をしてまいりたく、今後もご意見をお寄せください。


編集部より:この記事は東京都議会議員、上田令子氏(江戸川区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年10月5日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は上田氏の公式ブログ「お姐が行く!」をご覧ください。