FRBのパウエル議長は3日、「中立的な金利水準へとわれわれは徐々に向かっている」と指摘。「われわれは中立を超えるかもしれない。しかし、現時点では恐らく中立金利まで長い道のりがある」と述べた(ブルームバーグ)。
パウエルFRB議長、中立金利水準を超えて利上げを進める可能性ある https://t.co/EWUCOo3hiA pic.twitter.com/F1Ck8sOia0
— ブルームバーグニュース日本語版 (@BloombergJapan) 4 de octubre de 2018
9月26日のFOMCにおいて、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年1.75~2.00%から2.00~2.25%に0.25%引き上げることを、投票メンバー9人の全員一致で決定した。FOMC参加者の金融政策見通しによると、今年の利上げ回数は4回と前回予測と変わらず。2019年は計3回、2020年は1回。2021年はゼロとの予測となっていた。FRBは長期の中立金利を3%とみているようで、来年までにあと0.25%の4回程度の利上げによって中立金利に達することになる。
米10年債利回りは4日に一時3.2%台に上昇した。この背景にはFRBの正常化にともなう利上げとともに、物価上昇圧力が意識された。米国債券市場では物価が比較的安定しているなか、正常化に伴う利上げによって長期と短期の金利差が縮小していた。しかし、今後は物価動向も意識されて、この長短スプレッドが拡大してくる可能性もある。
いまのところ米国の足元の物価は落ち着いているようにみえる。しかし、原油価格の上昇による影響、さらには中国からの輸入品に関税を課すことによる消費財の値上がりが予想されている。アマゾンが米国内の約25万人の従業員と、約10万人の季節従業員の最低賃金を引き上げるなどの動きも出ており、賃金上昇による物価の上昇圧力が加わることも予想される。
5日に発表された9月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は13.4万人増と予想の18.5万人増を下回り、注目された平均時給は前年比2.8%増と8月の2.9%増からは伸びが鈍化していた。しかし、失業率は3.7%と1969年12月以来の低水準となったことで、労働需給の引き締まりが物価上昇圧力につながるとの見方から、この日の米10年物国債利回りは一時3.24%に上昇した。この長期金利上昇が嫌気されて、ダウ平均は180ドル安となった。
物価上昇圧力が加わり、それがFRBの想定ペースを上回るようなことになると、これまで抑制されていた長期金利にさらなる上昇圧力が加わることが予想される。緩やかな上昇であれば、市場への影響も軽微となろうが、節目を抜けたこともあり、米長期金利がさらに大きく上昇してくる可能性もありうる。
日本では長期金利を日銀がコントロールしている格好ながら、これは極めて異例の措置であり、FRBは長期金利をコントロール下に置いているわけではない。しかし、米長期金利が荒れた動きとなれば、FRBも慎重な対応を行う必要も出てこよう。また、日本ではどこまで長期金利がコントロールできるのかを試されることもいずれ予想される。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年10月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。