東京五輪ボランティア募集サイトは障害者を排除する

山田 肇

東京オリンピックボランティア募集フォームが入力しにくいと批判を受けている。画面を日本語入力にするボタンが見つけにくい、生年月日の入力欄が日月年の順番に並んでいる、ページを切り替えながら入力するとは直感的に理解できない、など使い勝手(ユーザビリティ)はボロボロである。

ところで、障害者はボランティアに応募できるのだろうか。パラリンピックには世界中から障害者アスリートが集まるから、彼らを支えるボランティアに同じ障害を持つ仲間がいれば、障害の事情に合わせた支援ができるようになる。

募集フォームには配慮・サポートについて入力する欄が設けられている。その下には、「車いすユーザーのため、活動場所がバリアフリー対応であることを希望する」「聴覚障がいがあるので、音声だけでなく手話通訳、筆談などを含めた情報保障を希望する」「視覚障がいがあるので、資料などのデータ提供を希望する」といった入力例がある。ここからは、組織委員会が障害者ボランティア参加に期待しているように見える。

しかし、問題は募集フォームに入る前、応募特設サイトのトップページにある。人々が灰色無地の背景の前に並んだ写真があり、そこに「ボランティアは、TOKYO 2020を動かす力だ。」と白文字で大書してある。灰色地に白文字のコントラスト比は3:1未満で、これはアクセシビリティ達成基準から外れている。この達成基準はロービジョン(弱視)の人がテキストを読めるように、テキストとその背景との間に十分なコントラストを提供するように求めるものである。それを満たしていないければ、弱視の人はボランティアに応募しにくい。

「ボランティアは、……」という白文字は人々の写真と一体で画像になっており、VoiceOverでは「イメージ」としか読み上げない。これでは「TOKYO 2020を動かす力だ。」という重要なメッセージが伝わらない。

総務省はウェブアクセシビリティの自動診断ツールmiCheckerを提供しており、それで自動診断すると、コントラスト比不足のほかにもエラーが指摘される。使用言語の指定が日本語と英語で重複する問題がその一つ。これでは、テキストを音声に変換するソフトウェアを使用している認知障害・言語障害・学習障害などがある利用者に対する配慮不足である。ページ内のコンテンツはほとんど日本語なのだから、デフォルトとして日本語を指定すべきだった。

組織委員会は「JIS X 8341-3:2016のレベルAAへの準拠を目標とする」というウェブアクセシビリティ方針を掲げているが、募集特設サイトは障害者を排除している。直ちに改修するように求めたい。