米中関係がますます険しくなるなか、米国の大手研究機関が中国共産党政権の対外戦略を分析し明らかにした。中国共産党政権が対外的な政治戦略で具体的になにを目指し、どんな手段をとるのかについての詳細な分析である。
習近平国家主席統治下の中国が、米国や日本を含むその同盟諸国に対して大胆で綿密な政治工作を進めている実態に鋭い光を当てた研究成果といえるだろう。
対外戦略をリードする共産党のエリート集団
ワシントンの安全保障研究の大手民間シンクタンク「戦略予算評価センター」(Center for Strategic and Budgetary Assessments:CSBA)は10月はじめ、「総合的な強制戦略への反撃」と題する報告書で、中国の米国やその同盟諸国への対外政治戦略の分析を公表した。
この報告書は、同センターの所長で戦略研究の専門家として2代目ブッシュ政権の国防総省高官も務めたトーマス・マーンケン、オーストラリア国防相顧問を務めた中国研究者のロス・ババッジ、前米国海軍大学教授で中国研究で知られるトシ・ヨシハラの3氏が共同で作成した。ババッジ、ヨシハラ両氏はCSBAの上級研究員も務めている。
同報告書は「中国の政治闘争へのアプローチ」という章で、中国共産党政権の対外政治戦略の特徴を詳述していた。
それによると中国の対外政治闘争は、習近平政権の戦略立案に基づき、共産党の中央統一戦線工作部を中心に中央軍事委員会、中央宣伝部、国家安全部、人民解放軍などを動員して行われる。また特に近年は、習主席が創設した「中央領導小組」と呼ばれる課題ごとのエリート集団が対外政治戦略の内容を決めることが多い、としている。