治安統制は海兵隊と連邦警察へ:メキシコ観光都市で自治体警察幹部3人逮捕

犯罪が横行しているメキシコで、ゲレロ州の観光都市アカプルコ(Acapulco)の自治体警察の幹部3人が逮捕され、9月25日から同警察組織の機能を停止させてメキシコ軍の海兵隊と連邦警察そして国家警察がアカプルコ市の治安のコントロールを開始している。

El Mundoより引用:編集部

アカプルコと言えば1960年代は米国ハリウッドスターの避暑地として栄えた所であった。

ゲレロ州はメキシコで最も暴力事件の多発している州のひとつである。2016年は2844人、昨年は2318人が殺害され、今年8月まで既に1507人が殺害されているという。

同州では、10ある麻薬組織「カルテル」が縄張りを争っている。

メキシコでは犯罪組織が警察の内部にまで浸透しているのは共通した出来事である。ゲレロ州ではその度合いが非常に高く、81ある自治体で犯罪組織に汚染されていない中立を維持している自治体は僅かに12。残りの69の自治体では大なり小なり犯罪組織が自治体組織に関与しているということだ。アカプルコもそのひとつである。

ゲレロ州の治安連携グループの報道官アルバレス・エレディアは、アカプルコの自治体の警官全員を審査したところ、700人以上の警官が評価試験にパスしなかったことを明らかにし、犯罪調査室と検察がその調査に当たることを発表した。

同報道官の説明によれば、海兵隊そして連邦警察及び国家警察が今後の市内の治安にあたることになったそうだ。理由は、市当局に犯罪の増加が記録されているにも拘らず、自治体警察がそれを取り締ろうとしないからだとした。

逮捕された3人の警察幹部とはスーパーバイザーのルイス・フェルナンド、装備や輸送部門担当のブラヤン・アントニオと交通担当部長のラファエル・リバスである。逮捕された彼らはアカプルコ以外の刑務所に収監されるそうだ。

海兵隊らによるコントロールの開始は政権交代の時と重なり、任期を終えるエボディオ・ベラスケス市長は3人の幹部が逮捕されたにも拘らず今回の不祥事をいつもある出来事のひとつだといった評価をしたという。一方の新市長に就任するアデラ・ロマンは彼女の市政府を構成するメンバーが殺害されるという脅迫を受けているとして訴えた。その内容とは、「新しい政権の誕生で自治体警察のメンバーを換えようとするのであれば銃弾を受けることになる」という脅迫だという。

ロマン新市長はゲレロ州ヘクトル・アストゥディリョ州知事の手配で、防弾装備のピックアップ車を常用している上に、海兵隊のパトロール隊が彼女を常に護衛しているそうだ。

この事態を重く見ている米国国務省は危険度レベル4をつけてアカプルコへの米国民が訪問するのを控えるように促しているという。在メキシコの米国大使館では暴力が高いレベルにあるアカプルコには訪問しないように要請しているそうだ。

アカプルコは年間520万人の観光客が訪れるという観光都市だ。武装した兵士が警備する中でのレジャーを愉しむというのも些か異様である。それを反映してか、ビジネスを廃業する者も増えているという。