ワークシェアリングが当時の経団連会長の口から出たのは2009年のこと。
当時は、職を失うことを防ぐため、仕事を分け合うという発想が主流だった。
必要とされる職に対し、人が多すぎた時代だった。
それから10年も経っていないのに、昨今は深刻な「人手不足」だと言われている。
経済状況の好転も大きな原因だろうが、ほんの10年足らずで労働力人口が激減するはずはない。
最大の原因は、労働力人口の流動化が実現できていないことだと、私は考える。
旧態依然たる大企業や役所が余剰な人員を抱えている反面、新しい産業などでは慢性的な人手不足だ。
待遇のいい大企業に勤務し、住宅ローンを抱え、子供の学費も必要な人たちが、未知数の新しい産業に自発的に移ることは滅多にない。さらに、厳格すぎる解雇規制が「移りたくない人たち」を守っている。
解雇規制の撤廃・緩和は、労働力人口の流動化促進には不可欠だ。
しかし、「住宅ローンが払えなくなる!」「子供の学費が払えなくなる!」という人たちの事情も斟酌すべきだろう。
長谷川慶太郎氏の著書によると、住宅ローンの3割近くが延滞しているとのことだ。
終身雇用、年功賃金制を前提とした「住宅ローン」というビジネスモデルは、すでに時代遅れになっている。
3割近くが延滞しているにも関わらず融資残高を増やしているのは、明らかに銀行の「貸し手責任」だ。
銀行は担保不動産のみで回収を我慢し、不動産価値を上回る残債務を免除すべきだと考える。
残債務が免除されれば、「住宅ローン」を抱えていても本当に身軽になれる。
持ち家だけを諦めて、賃貸に移ればそれで済んでしまうからだ。
銀行としても、担保価値をしっかり把握して健全な融資をするようになる。
また、高騰し過ぎてしまった「教育費」抑制のためには、多すぎる大学をどんどん淘汰すればいい。
昔の国立大学並みの学費になれば、「教育費」はずいぶん削減できるし、大学数の激減により優秀な高卒労働者の増加が期待できる。
誰もが横並びで大学生になる必要は毛頭ない。
学ぶ意欲のある人たちのために、大学の夜間部を復活させるのも一法だ。
貧しくとも、能力と志を持った生徒には、無償で特別なカリキュラムを提供することも考えるべきだろう。
「住宅ローン」と「教育費」という重荷を大幅に削減すれば、解雇規制を撤廃しても困る人が少なくなると思うのだが…いかがだろう?
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年10月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。