資本財大手キャタピラーや素材大手3Mの業績見通しに反応し、ダウは23日に一時550ドル近くも急落しました。米中貿易摩擦で打開策が見出せず、好悪材料が混合するなかで、コスト高や中国の需要低下など悪材料に反応した結果す。では、一体どんな内容だったのか、おさらいしていきましょう。
キャタピラー
・7~9月期の1株当たり利益は前年比62.7%増の2.88ドル、売上高は同18%増の135.1億ドルで市場予想は132.9億ドルを上回る。調整済みの1株当たり利益は同46.7%増の2.86ドル、市場予想の2.84ドルを上回る。
・売上高は、建設機器部門(売上全体の42%)の地域別にて北米が同22%増の26.5億ドル、アジア太平洋が同19%増の15.3億ドル、欧州・中東・アフリカは同10%増の11.1億ドル、南米は同5%減の3.7億ドル。資源機器部門(売上全体の20%)の地域別にて、北米が同46%増の8.5億ドル、アジア太平洋が同46%増の6.9億ドル、欧州・中東・アフリカが同18%増の5.7億ドル、南米が30%増の4.27億ドル。
・2018年の業績予想は1株当たり11~12ドルで据え置き、市場予想の11.65ドル以下
・鉄鋼・アルミ追加関税に伴う価格上昇を受けた素材価格の上昇のほか、配料の値上げにより製造コストが拡大。
・2018年の追加関税コスト負担は1億~2億ドルのレンジの下限、7~9月期は4,000万ドル。
・カンファレンスコールで、ボンフィールド最高財務責任者(CFO)は中国当局のインフラ投資拡大を背景に2019年に同国需要が強まると予想。
・中国は建設機器の売上の10~15%、全社売り上げの5~10%を占める。
・機械、エンジンなどを2019年に1~4%値上げへ。
3M
・7~9月期の1株当たり利益は前年比10.7%増の2.58ドルと市場予想の2.70ドル以下、売上高は同0.2%減の81.5億ドルと市場予想の84ドル以下。
・地域別の売上高は、米国が同1.3%増、アジア太平洋が1.6%増、欧州・中東・アフリカが3.9%減、カナダ・南米が5.5%減。
・通期の1株当たり利益見通しを従来の9.08~9.38ドルから8.78~8.93ドルへ下方修正、調整済みの1株当たり利益は従来の10.20~10.45ドルから9.90~10ドルへ下方修正。為替差損は0.05ドルと、従来の0.10ドルから引き下げ。本業の売上高見通しは前年比3%増、従来の同3~4%増から下方修正。
・追加関税のコスト負担、2018年度は2,000万ドル、2019年度は1億ドル。
・中国の景気減速を背景に、一部の製品で同国の需要が低下。
・ローマンCEOは「中国で景気減速の兆候が見て取れ、自動車組み立て率は大幅に低下し、その波及効果も確認している」と発言。
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両社の決算発表も重なり、S&P産業株指数は10月に入って6%安。
(作成:My Big Apple NY)
その他の企業の材料は、これまでで以下の通り。
ユナイテッド・テクノロジーズ
・ヘイズCEO、カンファレンスコールで「追加関税措置は最終的に最終財価格にあらゆる形で上乗せされる」と予想。
レノックス・インターナショナル
・米中貿易摩擦を背景に、中国の生産拠点を移転する方針を表明。
ポラリス・インダストリーズ
・トランプ政権の対中追加関税発動により、一段と深刻なコスト負担増について警告。
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製造業にとってはドル高や金利上昇に加え、米中貿易摩擦、中国景気減速の四重苦状態ですから、弱気派が台頭するのも無理はありません。しかも、S&P500構成企業の決算をみると売上高に異変が生じており、7~9月期はS&P500構成企業の17%が決算発表を終了した時点で前年同期比7.4%増と1年ぶりの低い伸びにとどまりました。
決算内容と業績見通しがさえないなか、2015~16年に経験した業績リセッション入りの再来を連想した方も少なくないでしょう。
結論から申し上げると、ファクトセットの見立てでは現時点で減収・減益が連続する気配はありません。2018年の1株当たり利益見通しは前年比20.2%増、売上高は同8.2%増に対し、2019年は1株当たり利益見通しが同10.3%増、売上高は同5.4%増へ鈍化する程度です。
それでも、S&P500やナスダックはテクニカル的に重要な節目である200日移動平均線を割り込んでしまい、一目均衡表の雲の下限を抜ける始末。ダウのみ何とか200日移動平均線で踏みとどまりますが、果たして転機を迎えることができるのか。本日引け後のマイクロソフトをはじめ、25日引け後のアマゾン、11月1日のアップルなどハイテク株の決算で米株相場の底力が試されます。
(カバー写真:pixelgrey/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年10月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。