経団連会長がパソコンを使うと「驚く」時代錯誤

山田 肇

10月24日付の読売新聞が、5月に経団連会長に就任した中西氏が歴代会長で初めてパソコンを執務室に備えメールしたと報じたところ、ネットが騒いでいる。メールも使えない人が日本企業のトップにいたことが世界から置いていかれていた原因だという意見、「虚構新聞」並みのフェークニュースではないかという意見。

経団連の中西宏明会長(Wikipediaより:編集部)

先般、その中西会長が就活ルールの廃止を表明した。これに対して、教育に悪影響を与えると大学は反発し、経済同友会の小林代表幹事は政府が就活ルールの策定を主導するのを支持すると記者会見で語った。

僕にはこれらすべてが古色蒼然としているように見える。

大学卒業生の多くは経団連加入の企業にはそもそも就職しないし、経団連に加入していない外資企業や伸び盛りの中堅企業は経団連の決めた就活ルールに従うはずはなく、自由に採用活動を実施する。こうして優秀な学生が経団連加入企業の外に流出する。このことは以前に記事「日本企業を志望しないグローバル人材」で説明した。そんな外資や中堅企業に対抗しようと、中西会長は就活ルールの廃止を打ち出したわけだ。

政府が主導して就活ルールを決めたとして、どのようにすれば外資や中堅企業にまで強制することができるのか。できるはずはないし、そもそも小林代表幹事は企業活動の自由をどのように捉えているのだろう。

執務室にパソコンを持ち込んだことも就活ルールの廃止も、中西氏は今の時代に当たり前のことをしているだけだ。それに驚き「中西氏からメールを受け取って本当に驚いた。紙でやりとりしてきた職員の働き方も変えようとしている」と語る経団連職員、それを記事にする読売新聞記者、政府に就活ルールを求める小林代表幹事、僕には彼らが古色蒼然としているとしか見えない。