“檄を飛ばす”“敷居が高い”慣用句の不思議な世界とは!

尾藤 克之

昨年くらいから、AI(人工知能)が話題になっている。AI の発展で人間がやる必要のない作業を中心に、少しずつ代替が進んでくることが予想されている。しかし、本質的な人間の関わりの部分が無くなることは考えにくい。

10月15日に、筆者として11冊目の書籍『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)を上梓した。なお、出版に併せて、数ヶ月前から「個人のtwitter」で慣用句などを中心にQ&A形式のツイートを重ねてきた。1日に4~5本の投稿をしていたので既にかなりの数になるが、思っていた以上に好評なので反響の大きかった投稿を5つ紹介したい。

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(1)檄を飛ばす
A氏:最近の営業は気合いがはいってない!
B氏:「檄を飛ばし」ますか?
「檄を飛ばす」は激励するという意味はありません。広く世間に知らしめることを意味します。文脈なら「活」が理想です。某番組で張本さんの「喝!」は誤用です。

(2)敷居が高い
A氏:昨日、社長と赤坂の料亭に行ってきたよ!
B氏:赤坂ですか。僕には「敷居が高い」です。
「敷居が高い」をレベルが高くて分不相応な場合に用いるのは間違いです。後ろめたいことがあり「もう一度行くには抵抗がある」ことの意味になります。

(3)糟糠の妻
A氏:奥さまは苦しい頃の社長を支えていたそうだ。
B氏:それは「糟糠の妻」ですね!
「糟糠の妻」→「そうこうのつま」と読みます。糟糠は酒糟と米糠のこと。つまらないもの。夫が貧しい頃から連れ添った妻という意味で使用します。

(4)白羽の矢
A氏:オリンピックまであと2年!
B氏:東京に白羽の矢が立った時には感動でした。
「白羽の矢」は多くの中から選ばれたという意味で使います。あくまでも人に対する話で場所や地域を指すものではありません。東京に白羽の矢が立ったは誤用です。

(5)おざなり、なおざり
A氏:お前、お客さんのフォローやってるか?
B氏:最近バタバタで「おざなり」です(汗)
「おざなり」と「なおざり」。「おざなり」は、いい加減な言動でその場を取りつくろうことです。「なおざり」は、そのままの状態で放っておくことです。
--ここまで--

コンパクトにまとめていることから、読みやすいのかも知れない。慣用句とは、習慣として長い間広く使われてきた言葉や言い回しになるが、誤用とされながらも既に一般化されているものが少なくない。一般化されているものは誤用とは言えないはずだが、この辺りは専門家でも見解がわかれている。

次回はその辺りの解釈の違いなどについてもケースを紹介したい。なお、拙著『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)は出版後1週間で重版が確定した。この場をかりて皆さまに御礼申し上げたい。

尾藤克之
コラムニスト