中央銀行の独立性の問題:日米伊の現状比較

イタリアのディマイオ副首相は26日、ドラギ総裁がイタリアに欧州連合(EU)との対決姿勢を弱めるよう呼び掛けるなどした件で、「雰囲気を悪化」させたと批判した。連立政権の一翼を担う「同盟」の有力上院議員、アルベルト・バニャイ氏はこれに先立ち、ドラギ総裁がイタリアの銀行の健全性について懸念を示したことは「不適切」との考えを示した(朝日新聞)。

ドラギ総裁は26日の講演で、自身の発言にイタリア連立政権内から反発の声が相次ぐ中、「中銀が財政、政治従属の影響を受けず、使命を達成するため最も適切な手段を自由に選べる姿が望ましい」と述べた(朝日新聞)。

ECBのドラギ総裁の出身国はイタリアである。イタリアのポピュリスト政権幹部らがドラギ総裁への批判を強めている。

今回のイタリア政権から出た批判は、ECBの金融政策に対する直接的な不満ではないものの、年内にも資産買入の停止を行い、来年の利上げも視野に入れつつあるECBに対する不満が高まっているようにも思われる。

米国では公然とトランプ大統領がFRBというか自ら議長に選んだパウエル議長に対しての批判を強めている。11月6日の米国の中間選挙を睨んだパフォーマンスともみえるが、いまのところそれがFRBの政策に直接的な影響を与えているようには思えない。米政権は中央銀行の独立性に配慮していることがうかがえる。

これに対して我が国の中央銀行はどうであろう。何度も繰り返すが、日銀が2%の物価目標を設定し、政府とアコードらしきものを結び、そして非常時でもないにも関わらず異次元緩和を行っているのは、政権の意向が強く反映されている。

政権は中央銀行の独立性を尊重と重視する姿勢を示そうが、そもそも日銀法改正までちらつかせて日銀を無理矢理な政策に追い込んだことは確かである。その結果はどうであろうか。物価は上がることなく副作用だけが問題化しつつある。このあたりもう少し我々は認識をあらためる必要もあるのではなかろうか。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年10月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。