相手に話を伝えたからといって、ビジネスの現場では相手が動いてくれなければ意味がない。交渉のシーンでは、「お願いしたいこと」を伝えるだけでは成果とはいえない。相手が動くことで初めて成果といえる。伝わらなければ、価値はない。
今回は、『期待以上に人を動かす伝え方』(かんき出版)を紹介したい。著者の沖本るり子さんは、「5分会議」を活用した、人財育成や、組織活性化の講師・コンサルタントとして活動中。TBS報道番組Nスタで“プレゼンの達人”と紹介されたことがある。
そのイベントには興味がありません
SNSでは気軽にイベントを招待することができる。しかし、場違いでまったく興味が無いイベントを招待してくる方も少ないない。はて、どう対峙すべきか?
「お誘いに対して最初に『感謝』を伝えます。なお、断ることへのお詫びは不要です。お詫びは両者の気持ちがマイナスになります。どんな理由でも、断ることに変わりありませんから、詳細理由も不要です。気をつかって関心のあるそぶりをするのは、『また同じイベントに誘ってください』とお願いしていることになります。同じイベントに毎回誘われないためにも、関心度の低さをはっきりと伝えましょう。」(沖本さん)
お題:嫌なイベントに誘われたくない。AとBのどちらが正解?
回答A
「うわ。ごめんなさい。すごく興味のあるイベントなんですけど、また、次の機会にお誘いしていただけるとうれしいです。m(_ _)m ゴメンナサイ」
回答B
「お誘いありがとうございます。あいにく、その日は別の予定があるんです。それに、現在は、私の中でそのイベントの優先順位が低いのです。お誘いありがとうございました」
ピシャリ!とやり過ぎでは?思う人もいるだろう。その時には相手に応じて使い分けてもらいたい。ポイントは、「断ることへのお詫びは不要」「関心がなければ一切興味を示さない」、この2点を確実に抑えることである。筆者が見る限り、この手法はストーカーにも効果がありそうだ。嫌な人の嫌な誘いには乗らないことである。
相手を動かすのがビジネスの要点
本書は「伝える」「伝わる」からさらに踏み込み、「伝わった結果、相手が期待以上に動いてくれる」ことをゴールにしている。「値引き交渉をおこない、3%の値引きを期待したが、5%の値引きに成功した」。「部下にアドバイスをしたところ、10日で予定した仕事が3日で終了した」など。相手を成果に導くことはビジネスの要点といえよう。
また、シュミレーションの設定が豊富である。会議を開いて「何か意見はないですか?」と尋ねても、積極的な意見が出されることは稀である。管理職の役割のひとつに、「課題解決」がある。課題を追求するのではなく、将来の課題を設定し解決策を導き出す行動特性になる。これも、自分ごととしてとらえなければ、成果にはつながらない。
非効率な仕事でも事実が積み重なると、「仕事をした気分になる」から不思議なものである。あなたの所属している部署はいかがだろうか。また、あなたの仕事ぶりは?
尾藤克之
コラムニスト
『即効!成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)
※拙著ですが出版後2週間で3刷となりました。心より御礼申し上げます。