朝日新聞は27日の「国債取引、活性化策を検討」という記事で、「日銀が緩和で国債を買い占めているため、国債の取引が乏しくなっている事態に対応し、今後買い入れ方法の見直しを検討する。」と報じた。
そして、29日にロイターも「日銀オペ弾力化、国債入札翌日の買入後ずれも 金利自律形成促す」と報じた。
ロイターの記事によると、「日銀は市場機能の改善に向けて、国債買い入れオペレーションの一段の弾力化策を模索している。具体策として、国債入札日の翌日の当該年限の買い入れを翌々日以降に後ずれさせることが、有力な選択肢の1つに浮上しているようだ。複数の関係筋が明らかにした。」
さらにロイターは下記のようにも報じている。
「入札日程の公表を取りやめるのではないか、との声も一部の市場参加者から出ているが、現時点で日銀は慎重なスタンスを維持しているもようだ。」
入札日程の公表を取りやめについては、市場機能の回復を目的とした市場活性化のためとして、不確実性や不透明性を増して市場を不安定化させるというのは本末転倒といわざるを得ない。
そして、今回有力とされている「国債入札日の翌日の当該年限の買い入れを翌々日以降に後ずれさせること」についても疑問は残る。
そもそも論として、国債入札日の翌日に入札で発行された国債を大量に中央銀行が買い入れるということに大きな問題があった。いったん入札で証券会社など業者が買い入れて、それを金融政策の一環として日銀が買い入れるとの理屈であるが、入札日の翌日に中央銀行が買い入れるとなれば、極めて財政ファイナンスに近い行為と言えよう。
ただし、入札日から少し日を置いて該当国債を日銀が買い入れるとなれば、長期債は短期債などに比べて、その期間における価格変動リスクが発生する。
「入札から買い入れまでの期間を空けることで、市場の自律的な金利形成を促すことが狙い。」(ロイター)
上記の狙いもわからなくもないが、そもそも自立的な金利形成を阻害しているのは日銀による異常な量の国債買入とイールドカーブコントロールによるものであり、それを修正しなければ本来の自立的な金利形成などありえない。
「もっとも、現在の市場は日銀トレードを前提に入札が行われ、金利が形成されている一面があることも事実。・・・入札翌日のオペを行わないことで、市場が不安定化する可能性も否定できない。」(ロイター)
不安定化させることである程度市場を活性化させようということも、わからなくはない。しかし、入札日程の公表を取りやめについてと同様に、市場機能の回復を目的とした市場活性化のためとして、いまになって期間リスクを増して市場を不安定化させるというのはやはり本末転倒といえるのではなかろうか。
入札に応じている証券会社を中心としたいわゆる業者にとっても期間リスクが発生することで、先物などのデリバティブ取引でヘッジする必要も出てくる。これはこれで市場の厚みが増加する面もあるが、これまでに比べて業者にとってコストが掛かる上に期間リスクによる損失リスクも生じる。
たしかに業者にとってもこのようなリスクを負うことは、少なくともイールドカーブコントロール導入以前はあたりまえであったことではある。しかし、金利形成に対する日銀への依存度があまりに高すぎることによって、ファンダメンタルズなどに応じた金利形成とは異なる市場となっている面もある。日銀の動きにあまりに縛られすぎている現在の市場で、このような業者へのリスク分の負担についても、個人的には疑問が残るといわざるを得ない。結論からいえば長期金利を自由に形成できる状態に戻すこと、それに尽きる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。