戦闘機開発、テクノナショナリズムと夜郎自大

次期戦闘機の選定基準   国内企業の参画重視 防衛相、技術維持へ配慮(日本経済新聞)

岩屋毅防衛相は6日の閣議後の記者会見で、2030年をメドに導入する次期戦闘機の選定を巡り国内企業の参画を重視する意向を示した。30年ごろから退役するF2後継の次期戦闘機は、国産か国際共同開発、既存機の改修のいずれかで対応することが決まっている。岩屋氏は「共同開発であれ、既存機の派生型であれ、国内企業がどれくらい関与できるかはよくみていく」と述べた。

国内産業に配慮する姿勢を示すのは、防衛産業内に不安の声があるからだ。日米で共同開発したF2の製造を終えてから、ここ数年は戦闘機の国内生産や開発がない「空白期間」が続く。今回の選定で日本企業の関与が限定的なら、培ってきた日本の技術が衰退するとの懸念が根強い。

航空自衛隊内には、海外企業主導になれば部品の交換や改修がしにくく運用に支障が出ると不安視する向きもある。岩屋氏が示した基準はこうした意見を踏まえたものだ。

何をいまさら、というお話です。
FXでF-35を選んだ段階で、国産戦闘機生産基盤はなくなりました。少なくとも相応のコンポーネントを国内生産し、また自主的な改良を施して技術を発展させる素地を摘んでしまった。

F-35A(空自サイトより:編集部)

更にF-35導入は国産搭載火器に対する引導でもあったわけです。にウェポンベイに収納するために、独自の兵器体系が必要となり、そうなれば搭載兵器の必要数は激減し、ただでさえも生産性悪くてバカ高い国産ミサイルなどは更に高くなり、搭載ミサイルなどの国内開発はかなり難しくなりました。

しかもF-35を導入するならばおとなしく、輸入にすればよかったのに、わざわざ国内組立で値段を釣り上げて採用しています。単なるですから技術移転というプライスレスなメリットもない。

こういう官の当事者意識&能力の欠如に嫌気がさして、撤退したベンターも多数あります。三菱重工だってMRIでケツに火がついている状態で、戦闘機に避けるリソースがどれだけあるでしょうか。

ユーロファイターを採用して、ライセンス生産していれば、生産基盤は維持できて、また技術移転も可能でした。ブラックボックスが多く、勝手な改良ができない米国製の機体と違って、独自の改良や近代化も可能でした。

率直に申し上げて、防衛省、空幕は分裂症としか思えません。

そもそも戦闘機に何を求めるのか、国産するならば何故国産するのか。これだけ巨額の開発費がかかるのに、機体、アビオ、エンジン、火器まで全部やろうしています。

産業振興はどうあるべきなのか。そういういうグランドデザインがまったくない。
行き当たりバッタリでいつも言うことが違う。優先順がつけられないので全部大事というから、全部ダメになる。

そもそも論でいえば自前で優れた戦闘機が作れるという単なるテクノナショナリズムに基づく、根拠ない自信が問題です。

F-1が駄目だったのはある意味仕方がない。経験もないし、カネもなかった。単に「国産戦闘機」をつくったという実績はできたけど、「優れた戦闘機」を作れる能力はまだない、という自覚がないわけです。むしろ俺たちって戦闘機作れるんだよねえ、という変な自信を官民ともにもってしまった。世界に向き合わず、身内だけでうなずきあって俺たち最高と褒めあっている。

ぼくが暴露しましたがMRJのパリ航空ショーでのお披露目の際に、大使公邸で日本の関係者だけを呼んで飲み食いしていたのは、そういう日本業界の弛緩しきった体質の結露でしょう。市場で売れる物作るのがどれだけ大変か、それが未だにわかっていないのが日本の業界です。それでいて自分たちは先進国並の製品が作れると胸を張っている。

そもそも日本の防衛航空機関連メーカーにやる気はあるのか、ということも問題でしょう。
下請け企業でも将来例えば防衛に限らず、世界の市場に挑戦して売り上げるというビジョンや野望がある企業ならば後押しする価値はあるでしょう。ですが単にぶら下がっている企業に胃ろうして生かしているようなものです。

防衛需要にぶら下がっている寄生虫のような企業群を食わすために、できの悪い装備品を国際価格の何倍でつくることしかできない企業を税金で食わすことに何か意義があるでしょうか。

例えばヘリ産業なんてものは軍民の垣根が低く、世界の軍民市場へのアクセスも容易です。国内市場だって世界有数の規模です。ところがヘリメーカー3社は国内の消防、警察、公的期間ですらシェアはほぼゼロです。例外はBK117ぐらいです。防衛省の需要で喰っていくことしか考えていない。こういう会社を税金で食わせる意義がありますか?

Wikipedia:編集部

またUAVはヒロボーやヤマハ、フジインバックなど民間でも実績がある会社が少なからずあるのに、わざわざ日立やスバルに発注し、飛びもしない、国防はもちろん防災にしても役に立たないガラクタに何百億円も掛けてきたわけです。

まともなUAVメーカーにそのカネを突っ込んでいたら、今の日本のUAVの市場はもっと拡大し、海外でも大きなシェアを獲得できたことでしょう。

維持したいのは「防衛産業」ではなく「既存の防衛メーカー」ではないでしょうか。
産業振興をしたいのであれば、だめな会社には退場してもらい、やる気のある企業を防衛に招き入れるべきです。

それができないなら無駄に税金をばら撒くだけになります。我が国にそんなお遊びをやっている猶予も余裕もありません。

官の側は「部品の交換や改修がしにくく運用に支障が出る」といいますがこれもいいわけです。国産のクズを3~8倍で買う余裕があれば予備のパーツや予備の装備を多量に買い込めます。また海外メーカーや国内企業に整備や近代化程度ができる専門の工場を作らせてもいいでしょう。

実際警察や消防のヘリは自衛隊よりも遥かに稼働率にシビアですが、海外製を使っていて問題はありません。実際にエアバスヘリの用に本格的な整備施設や訓練施設を持っている企業もあります。

対して何倍も高い国産装備を採用している自衛隊ではP-3C、SH-60K、F-15Jなどで共食い整備をしています。高いおもちゃを買うから、整備費が出ないためです。更に申せば訓練時間も20年ぐらい前と比べると大幅に減っています。国産採用によるデメリットも正直に納税者に説明する責任が防衛省にはあるはずです。

国産を維持したいのであれば世界の趨勢を常にウオッチし、性能、価格で負けない製品を作る努力をすべきです。現状の官の側にもメーカーにもその当事者意識と能力が欠如しています。駄目な50ズラさげたおっさんニートみたいな企業に飯を食わせる余裕はありません。

■本日の市ヶ谷の噂■
日本製鋼所は独自に動力式の20ミリ機関砲を開発との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年11月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。