こんにちは、むくぎ太一(広島市安佐南区)です。
「色の見え方が一般的なものと異なる「色覚特性」を持つ人たちがいます。私自身、この特性を持つ、いわゆる「色弱」で、黒板に書かれた赤い字が見えづらいなど、とても苦労した経験があります。
この色覚特性は先天的なもので、「治る」といった性質のものではありません。ですから、外部から何らかの配慮や工夫をしなければ、この特性を持った多くの児童・生徒は不利な状況に置かれたままとなります。私の場合、子どもながらに「自分が我慢すればいい」と声に出さずにいたように記憶しています。
しかし、子どもたちにとって、大半の時間を過ごす学校で、「文字が見えづらい」、「識別できない」ということは、想像以上にストレスとなります。学習そのものへの障害ともなりうることなのですが、まだまだ、満足のいく対策が取られているようには思えません。
日本眼科医会によると、色弱者は、日本人男性の20人に1人、女性は500人に1人の割合でいます。また、色弱の保因者は、女性の10人に1人の割合といいます。ですから、40人学級(男女各20人)だと、色弱の男子が1人、保因者の女子が2人いることになります。
つまり、色弱は例外的なケースではなく、色覚特性を持つ者にとって暮らしやすい「カラーバリアフリー」は社会全体で取り組まなければならない問題の一つだと言いたいのです。
(※同医会などは、色弱ではなく、「色覚異常」という言葉を使用しています。)
そんな中、先日、色覚特性を持つ子どもたちが識別しやすいように開発されたチョークがあることを、ネットニュースで知りました。「eye(アイ)チョーク」(日本理化学工業社製)という製品で、カラーバリアフリーの一環で開発されました。
実際、これまでのチョークと比べると、見やすさ、色の識別のしやすさが断然、違いました。目からうろこが落ちた思いがしました。千葉県松戸市は公立のすべての小・中学校で導入をしているそうです。こういった取り組みが、各自治体に波及することを期待したいと思います。
ところで、色弱者にとって、学校の現場でやっかいな存在となるのはチョークだけではありません。気温や降水量の分布を色分けした地図帳が代表的でしょう。気温は暖色のグラデーションになっていることが多く、凡例から離れた地域の気温を識別することは、私にとって拷問に近いものがありました。
また、色弱は先天的なため、大人になっても「治る」ことはありませんので、社会生活上、色の識別で不便を強いられるケースは多々あります。例えば、電車の路線図や、テレビやDVDといった電化製品の電源ランプ(赤と緑が識別できない)などです。
また、自治体が発行する「ハザードマップ」は、現実には、色弱者にとってかなりハードルの高いものが多いと言えるでしょう。たいてい、災害が起こる危険度が同一色のグラデーションで表現されており、しかも、その個所が細かく入り組んでいて識別しづらいためです。ハザードマップは元来、地域住民の安全・安心を確保するために作られたものなのに、いざという時に使いづらいのでは、これほど残念なことはありません。
徳島県鳴門市や東京都調布市などはすでに、ハザードマップをカラーバリアフリー化しているということです。私の地元、広島市も含め各自治体で、チョークをはじめとしたカラーバリアフリーに積極的に取り組んでいかなければなりません。それは、色弱者の切なる、秘めた思いなのです。
むくぎ(椋木)太一 ジャーナリスト、元読売新聞記者
1975年、広島市生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務などを経て2006年、読売新聞西部本社に入社。運動部記者時代はソフトバンクホークスを担当し、社会部では福岡市政などを取材した。2018年8月に退職し、フリーランスに。2019年4月の広島市議選(安佐南区)に立候補予定。公式サイト。ツイッター@mukugi_taichi1