英国政府は14日に開いた臨時閣議で、欧州連合(EU)からの離脱を巡り交渉官レベルで暫定合意した離脱協定案を了承した。この協定案は2020年末の離脱移行期間終了後も懸案の英国とアイルランドの国境管理問題が解決するまでは、英国がEUとの関税同盟に当面残留することが柱になっている(日経新聞電子版)。
英領北アイルランドとEU加盟のアイルランドで厳しい国境管理をしないための本格的な対策を先送りするという「安全策」すらまとめられずに、膠着感を強めていたが、その先送りの安全策がまとまり、それが英国政府の閣議で決定されたことになる。
20年末の完全離脱後に英・EU間で結ぶ通商協定の具体的な内容は、来年3月の離脱後に議論するそうである。
EU側も14日に英国を除く27か国の大使級会議を開き、英国側の進展があれば月末の臨時EU首脳会議の準備に入るとされ、第一関門となるの英国とEU間の合意にはメドが立った。しかし、そのあとの英国とEU両議会での承認が次の関門となる。
英国内には対EU強硬派を中心に与党内での反発が強い。辞任を示唆する閣僚もいるなど、議会の承認を得られるかは不透明となっていた。実際に閣議での了承後に、ラーブEU離脱相を含む閣僚らが辞任を表明した。
いわば先送りを前提とした妥協案ですら、まとめるのにひと苦労していたわけだが、少なくとも一歩は前進したことになる。しかし、これで英国のEU離脱に向けた不透明感が払拭されるわけではない。もちろん議会を通すことが可能なのかという問題が大きいものの、将来的な英国とアイルランドの国境管理問題をどうするのかといった具体案が見えているわけでもない。
15日の欧米市場ではこれを受けてのリスク回避の巻き戻し的な動きは限られた。原油価格の急落や米株の下落などから、今後の世界経済の減速観測などに市場の関心が向けられており、英国の動向はそれほど材料視されていない。
市場の地合いが良ければ、今回の英国を巡る動きが株式市場の買い戻しの材料とされることもあるが、地合が悪化しているときには好材料にはあまり反応しなくなる。今回の市場の反応をみても、金融市場の地合いは悪化しつつあるとの見方もできるかもしれない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年11月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。