日産自動車(以下、日産)のゴーン会長が金融商品取引法違反の疑いで逮捕された事件について、日産の西川広人社長兼最高経営責任者が19日夜に会見をおこなった。そこで、「ゴーン氏の不正を確認したこと」「会社として解任することを決断すること」を明らかにした。木曜日に取締役会を招集して今後の手続きにはいる。
ポイントは「25%ルール」ではないか
ここで、ルノーと日産の資本関係をおさらいしたい。株式はルノーが43.6%を保有している。日産は15%を保有するがルノーの連結子会社であることから議決権が無い。さらに第三者割当増資によって三菱自動車の株式34%を取得しており、実質的なルノー支配である。
販売台数はどうか。ルノーグループは2017年に376万1634台を販売し、日産自動車は581万6278台を販売している。時価総額も日産が上回っている。ルノーと日産の経営統合の噂が絶えなかったが、今回のゴーン氏逮捕でどのような影響があるのか。
今後、取締役解任の流れになることが予想されるが、解任になったとしても大株主であることに変わりは無い。上場会社の場合、1/3以上を保有していれば、実質的に会社支配をすることは難しくない。議決権を行使する会社が実際には少ないということである。日産の内情はわからないが、1/3程度の株式であっても、実際に行使される議決権の過半数を有していることと同じ意味をもつことがある。
また、今後の焦点は「25%ルール」ではないかと推測している。「会社法第308条の25%ルール」では、議決権ベースで1/4以上の株式を有している企業に対して、自社の議決権の行使を認めていない。
日産がルノー株を25%以上まで買い増すと、双方に議決権がない状態になる。つまり、日産がルノー株を買い増すことでルノーの議決権が消滅し経営への介入を阻止することができる。さらに、ルノーに影響力をもつ、フランス政府の介入をも阻止できるのである。
買い増しをして「25%ルール」が適用になれば、大きな抑止力になることは間違いない。今回のゴーン氏逮捕を機に、日産がルノー影響力の排除までを視野にいれているのであれば「25%ルール」は大きな焦点になると考えられるのである。
今回は、足元をすくわれたが絶妙
油断して失敗することを「足元をすくわれた」と表現することがある。本来は、「足をすくわれる」が正解で、「足元をすくうこと」はできないので「誤用」が一般的な解釈になる。しかし、足元には、 立ったり歩いたりしている動作や、動いている場所の意味がある。さらに地に足がついている広範囲を指す意味。
すくうのは「足」かもしれないが、今回は動いている進行形のなかでの出来事。入念な準備や司法取引までの可能性を鑑みれば、「足元をすくわれた」という表現も悪くはないと考える。誤用とされながらも既に一般化されているものが少なくない。一般化されているものは誤用とは言えないはずだが、この辺りは専門家でも見解がわかれている。
参考書籍
『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員