16日、FRBのクラリダ副議長が米CNBCテレビのインタビューで、政策金利について「(景気を過熱も冷やしもしない)中立金利に近づいている」と述べた(17日付日経新聞電子版)。
これを受けて16日の米国債券市場では、今後のFRBによる利上げ回数が想定されるほど多くはない、つまり今後の利上げに向けた動きにブレーキが掛かるのではとの観測から、米10年債利回りに低下圧力が加わった。
ところで、FRBのクラリダ副議長とはいったいどのような人物なのか。今回の発言の背景には何があるのかを考えてみたい。
リチャード・クラリダ氏は今年の9月にFRBの金融政策担当副議長に就任したばかり。FRBにはもうひとり副議長がいる。ランダル・クオールズ副議長であるが、こちらは金融規制担当副議長となっている。
リチャード・クラリダ氏は、米財務省で財務次官補から、コロンビア大学の経済学部の学部長を務め、レディ・スイスとグロスマン・アセット・マネジメントに勤務ののち、PIMCOのグローバル戦略アドバイザーおよびマネージング・ディレクターを務めた(PIMCOのサイトを参照)。
また、クラリダ氏は金融政策を研究するエコノミストとして知られている。
FRBは2020年まで利上げを続けて政策金利を3.5%まで引き上げるシナリオを中心路線としている。ただ、当局者は景気を過熱させず冷やしもしない「中立金利」を3.0%と分析しており、FRB内には中立水準で利上げを停止すべきだという慎重論もある(日経新聞電子版)。
その慎重論に組みしているのがクラリダ副議長といえる。すでに10月25日の講演でも、「2019年に入って物価が安定したままなら、想定以上の利上げには反対する」と述べていた。利上げに積極的ともみられるパウエル議長に対して、どうやらクラリダ副議長はブレーキ役となっているようである。これには結果としてだが、利上げに強く反対しているトランプ氏への配慮とも映る。
クラリダ副議長はトランプ大統領の意向を反映した発言というよりも、自らの考え方に基づいて、過度な利上げを牽制しているようにもみえる。これまでのようにFRBにとっても順調に利上げが継続できるのかはファンダメンタルズなど次第の面もある。年内あと一回の利上げがあったとしても、2019年の利上げ回数は3回程度となり、そこで打ち止め感が出てくる可能性はある。それより早く利上げが打ち止めとなる可能性もありうるか。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。