歩いて、楽しんで、健康増進:モールウォーキング

厚生労働省が掲げる『健康日本21(第2次)』では「日常生活における歩数の増加」が目標の一つである。2010年の男性(20歳~64歳)歩数平均7841歩・女性6883歩を、2022年に男性9000歩・女性8500歩に増やすという。

国土交通省の資料には歩行の医療費抑制効果に関する研究結果が引用されている。三つの独立した研究で、0.045円/歩/日、0.061円/歩/日、0.030円/歩/日といった数値が出たそうだ。一日一人1000歩伸ばすと50円、年間18000円、1億人で1兆8千億円の医療費が抑制される勘定になる。

それでは、どのようにして歩数を増やすか。実は歩数には地域差がある。厚生労働省『平成28年国民健康・栄養調査』によれば男性(20歳~64歳)について、東京都8611歩・大阪府8762歩、秋田県6626歩・高知県5647歩などとなっている。公共交通機関が発達し駅から目的地まで歩くのが当たり前の地域では歩数が伸び、何にでも自動車を利用する地域では歩数が少ない傾向が見える。

対策としてコンパクトシティ化が注目される。富山市が路面電車をループ状に運行したのは、市民の回遊を促進するためである。新潟県見附市は市民が集まる施設沿いにコミュニティバスのルートを設定して、バスを使って施設に来るように市民に促している。

イオンモール告知ページより

企業も歩行促進に協力できる。イオングループのモールウォーキングが一例。全国のモール内に全天候型のウォーキングコースを設定することで、天候に左右されず、快適に、買い物しながら、ウォーキングを楽しめるようにできている。室内なので真冬の豪雪地帯でも歩数が稼げる。

見学したモールではまだ参加者は少ないそうだが、工夫の余地はある。血圧や体脂肪率の測定器がコース途中にあり無料で利用できるようになっていたが、血圧などの数値を直接示すだけでなく総合して「身体年齢」を出せば、化粧品コーナーに「肌年齢」測定器を置くと女性が集まるように、関心が高まるかもしれない。蓄積したウォーキング記録を基に食生活をアドバイスするのもよい。

モールウォーキングで歩数が増加し、健康寿命が延伸して医療費が削減できれば、これは大きな地域貢献である。